応力集中

1). 応力集中について

形状が大きく変化すると応力が集中し、周囲の応力よりも大きくなることが知られています。
以下のボルトで応力が集中する部分を示すと、丸印(赤色)の部分が当てはまります。

【応力集中の例】

直径dの穴があけられた板を荷重Pで上下に引張った場合、直径dの穴周りに生じる応力集中は以下に示されるような特徴を示します。

  • 荷重Pが作用する断面積A0に対し、穴があけられた部分は(穴の直径d×板厚)だけ断面が少なくなっている。

  • 穴の周辺に生じる応力は穴付近で高くなっており、断面に対して均等には発生しない。

2). 応力集中係数

試験片AとBに同じ外力を作用させる。(下図)
このような場合、試験片Aと比べ、試験片Bに生じている応力は切り欠き先端部分で応力集中の状態にある。

このような形状変化によって生じる応力の最大値と、形状変化がなかったと想定して得られる平均応力の比を応力集中係数と呼ぶ。
この応力集中係数は応力集中の度合いを示す値であり、以下のように表わされる。

【例題】

板厚1.00mmで幅30.0 mm(2W)の板に直径6.00 mm(2a)の穴があいている。
この板を応力σ = 120. MPaで引張る場合、以下のグラフを利用し穴回りの最大応力を求めよ。

【解答】

はじめに、例題で示されたグラフから応力集中係数を求める。
グラフ横軸の値(a/W)は、板の寸法形状から以下のように計算される。

a ⁄ W = (6.00 mm) ⁄ (30.0 mm) = 0.20

グラフを使い (a / W) = 0.20 の位置でグラフと交わる点での応力集中係数 Kt を求めると応力集中係数 Kt = 2.5となる。

最大応力は応力集中係数と平均応力の積(掛け算)なので、以下のように求められる。
よって以下の計算結果から最大応力は300. MPaと予測される。

演習問題

幅 10.0 mm, 板厚 (h) 1.00 mmで穴径 2.00 mm の穴が空いている板がある。
この板に引張荷重 (P) 200 N が負荷される状況を考える。

【設問】

  1. (a / b) の値を求め、以下に示されるグラフから応力集中係数を求めなさい。

  2. 平均応力を求めなさい。

  3. 設問1.で求められた応力集中係数から、最大応力を求めなさい。