改造企画書の事例 1

はじめに

本来、問合せがあった仕事の企画書や提案書を公開することはありません。
今回、改造に関する相談を受け、設計作業見積書と改造提案書を提示したところ、提案書の内容は誰でも思いつく内容とのことで改造提案書だけ取り上げられて見積書は戻ってきました。

誰でも思いつく内容とのことでしたので、仕事の事例として公開することにしました。
普段は技術士法第45条に従い、機密保持の義務があるため公開することはございません。

事業紹介で説明する開発・設計の一端をご紹介できたらと思います。

経緯

ゴルフ場(浜松市内)で利用されているゴルフカートには、お客様が雨に濡れないように雨よけ用ヒサシが改造で取り付けられている。
ゴルフ場の利用者からは好評だが、風にあおられると振れが大きく一部では折損したヒサシもある。

来年あたり修理の時にヒサシの改造を提案したいので、アイデアを出して欲しい。

このような依頼があり、下図の提案書 (2枚目)に掲載した図面が提示されました。
ここから下図の提案書 (1枚目)にまとめた提案書の検討が始まります。結果的には誰でも思いつく内容だったそうですので残念です。

現状把握

提案をする場合、現状品に対し以下のことが求められます。提案内容と比較できるように現状把握は大事な内容となります。

  • 重さ 軽いこと。

  • 丈夫さ 簡単に壊れない。風にあおられても振れ幅が小さい。

  • 製作コスト 現状品と比べて製作費や材料費が安く。

現状把握を行うため、三次元CADで形状モデルを作成し、強度シミュレーション(FEM解析)による仮想強度試験を行いました。

現状把握の結果

1). ヒサシの仕様(フレーム)

《材質》アルミ合金
《重量(質量)》 1.97 kg
《鋼材タイプ》
【三次元CADで作成したフレーム・モデルのパーツ色】

  • 板(幅25 mm/板厚6 mm) 【青色】

  • パイプ(外径16 mm/板厚2 mm) 【緑色】


2). 強度・剛性の確認

《自重によるたわみ》 0.88 mm
《共振周波数》0.60, 0.92, 1.3 Hz
(※ 風力1~4 (0.3 m/s~8.0 m/s)の範囲で振動し易い。)


《耐久年数》約7~8年 (↑付近)
(※ カートを以下の条件で使用した場合に想定される耐久年数)
《カートの使用条件》
以下の天候の中、カートで18ホール(休憩時間を含む)をラウンドする場合を想定しています。

  • 約5分に1回、ヒサシ先端が80 mm程度、振れるような天候。

  • このような天候が年間20日ぐらい。(12月~3月に集中する場合、1週間に1~2日)

提案内容(事前検討結果)

【提案のメリット】

《自重(質量)》 1.46 kg - (0.51 kg の軽量化)
《自重によるたわみ》0.24 mm - (現状品のたわみに対し23.3 %まで少なくなる)
《共振周波数》 1.1, 1.5, 2.1 Hz - (剛性が大きいので、そよ風では振動しない)
《耐久年数》 約30年以上 (↑付近) - (耐久性が向上し、カートの寿命と同等になる)
(※ 現状と同じ条件の場合、ヒサシ先端の振れは、80 mmから32mm程度になる。)

おわりに

誰でも思いつく内容とのことですが、勘や思いつきのようなもので数値は示してはおりません。
根拠となる数字は仮想実験(強度シミュレーション)に基づく結果です。

このような提案や検討、あるいは現状把握などでお困りでしたら、お役に立てると思います。
別途、検討費用は頂戴いたしますが、費用総額は内容により変わります。

まずはお問合せフォームからご相談ください。

提案書 (1枚目)

ゴルフカート雨よけ用ヒサシの改造提案書

提案書 (2枚目)

現状のゴルフカート雨よけ用ヒサシの寸法形状図