MATLABとMBD(モデルベースデザイン)

1. はじめに

2020年4月より豊田高専で『デジタル×ものづくり』カレッジの非常勤講師をしております。
自分が担当する分野はものづくり基礎セミナーになります。
主に仕様作成から部品製造・試作組立を担当しています。

先日、MBDと省略されて言われるモデルベースデザインの話として、MATLABを使った仕様作成と装置開発の話題を提供させていただきました。

カレッジ参加者の注目はIoTの応用事例に興味があるようで、話題としては盛り上がりませんでした。
モデルベースデザイン自体は注目されている開発手法ですので、提供した話題の一部をご紹介いたします。

『デジタル×ものづくり』カレッジの概要

2. 製品開発のデジタル化

1980年に商用利用を目的とした三次元CADの販売が始まります。
しかしTSS(タイムシェアリングシステム)による汎用コンピュータを利用したCADシステムであり、航空機や自動車業界の一部でしか利用できませんでした。

それから20年後の2003年、Windows XP の登場により三次元CADが市販のパソコンでも動くようになりました。
それまではEWS(エンジニアリングワークステーション)と呼ばれるハイエンドのコンピュータで三次元CADを使っていました。
当時のパソコンのCPUが32bitに対し、このEWSのCPUは64bitなのでWindowsが使えなかったのです。

このWindows XP により、三次元CADが使える環境が中小企業でも安価に入手できるようになりました。


このような背景から『デジタルものづくり』という言葉がうまれ、製品開発の手法が製図をベースとした二次元CADから三次元CADへの移行を強く求められるようになりました。

具体的には図に示されるような流れになります。

3. デジタル化の課題

デジタル化を進める過程で以下の課題が出てきました。2007~2008年頃のことです。

  • OEM側から製品仕様の変更が要求されたとき、その影響や改善方向を検討するツールや手法が見当たらない。

  • 現状はロットごとに抜き取り検査だが、将来的には全数検査とトレーサビリティが要求される。製造過程で管理する膨大な品質データの統計的な処理をどのようなツールを使って管理していくか。

この二点が大きな課題でした。

4. モデルベースデザインとは

モデルベースデザインとは、モデルをベースに製品開発を行うV字の開発過程のことです。
この場合のモデルとは製品に求められる仕様を元にした制御モデルや形状モデルなどのことです。

三次元CADを使った製品開発は形状モデルを作成し組合せ、仕様に合致する製品の形状を求めていく過程です。
この形状モデルを作成する時点では、要求される機能や性能、能力などは概ね定まっています。

これら仕様を検討し定める方法としてMATLABのオプションSIMULINKを使います。
SIMULINKでは製品に求められる機能や性能をブロックで表現し、各ブロックの関係を結びつけてブロック線図を作成します。
このブロック線図は制御可能な製品の制御モデルとなります。
このモデルを使い開発目的の製品についてシミュレーションを行い、仕様を決めていきます。

そのため、仕様検討のために作成された製品のブロック線図は『動く仕様書』とも呼ばれています。

5. モデルベースデザインと製品開発のデジタル化

三次元CADを使った製品開発をモデルベースデザインの開発過程に当てはめると『基本設計』以降の過程に該当します。
3.節で挙げたデジタル化の課題とは、モデルベースデザインの開発過程の中で『要求仕様』や『受入テスト』の部分に対する取組みであることが見えてきました。

弊社ではMATLAB/SIMLINKを使い、お客様と打合せをさせていただきながら装置の仕様から設計・製作までの製品開発を請け負っています。


仕様作成の部分では、装置の形状が決まる前から、予測される装置の動きや能力をグラフなどで示し、動く仕様書として提示します。
また制御モデルのデータから制御する項目などをパネルにまとめ、制御盤のレイアウトとして提示します。

このような検討を経て定まった仕様に基づき、基本設計・詳細設計となる三次元CADを使った形状設計を行います。
この時点では、装置の動きや電装機器に求められる仕様も決まっていますので、電装設計とも連携を取りながら並行して形状設計を進めます。

電装系の制御プログラム(ラダー等)も制御モデルの動きをプログラムに作り直すだけですので、実装後のプログラム修正が少なくなります。


一方、『受入テスト』の部分では、MATLABには大規模なデータを取り扱う機能があります。
また、統計的な処理も簡単なスクリプトで作成可能です。
大事なことは、仕様を決める過程で品質管理項目も決められるので、初期検討時に品質管理プログラムも作成可能だということです。

6. さいごに

話題提供の中には、MATLABについての一般的な説明も加えましたが、ここでは省略いたします。
国内販売元のマスワークス合同会社様にお問合せください。

MATLABを使ったモデルペースデザインの事例も紹介しましたが、別の機会にご紹介したいと思います。

お問合せについては、こちら(お問合せページ)からお願いいたします。