Post date: Jan 19, 2018 2:05:26 AM
1. はじめに
ドラフターと呼ばれる製図器を使っていた時代には、手描きの図面を清書する仕事がありました。その仕事に従事する方をトレーサーと呼んでいました。
一方で設計者は強度計算や製造現場との調整を行い、図面に手描きで修正をしていました。
近年では標準的な装備として二次元や三次元のCADが普及してきました。
普及に伴い、それら業務用ソフトウェアのオペレーター育成が急務となり、その状況は今でも変わりません。
そのような状況に応えるため、三次元CADのオペレーターを育成するコースが開設されました。
2. なぜ力学を教えるのか?
当初は大手企業を中心に、紙の図面を三次元データに造形するトレーサーとしてデジタル化業務を担っていました。
2000年に入る頃からNC装置との連携で生じる課題解決に注目が集まり、三次元データを利用した開発から製造までの流れをスムーズにする取組みがなされてきました。
さらにハードウェアの性能向上とソフトウェアの低価格化が進み、三次元CAD導入経費が抑えられるようになると、中小企業への普及に勢いがつきました。
三次元CADの普及に伴い、求められるスキルも三次元データのモデリングから三次元CAD全般の操作となり、ソフトウェアに附帯するシミュレーション機能の取扱いも求められる様になりました。
その結果、オペレーターの能力に力学の知識が必要となり、専門学校の三次元CADオペレーター育成コースの中で力学を教えている訳です。
現場で困らないように、必要な単位の話や強度計算に用いられる機械設計の公式の利用方法を中心に教えることにしました。また理論的な背景は興味が湧いてからとし、それ以前の状態では、安全を意識しながら公式を正しく理解し使えること。
それを授業の中心としました。
5. 授業内容の事例
以下に具体的な事例を紹介します。
以下の図で片持ち梁の公式で計算している部分は、梁のどの部分ですか?
梁の公式では、梁の断面形状を断面二次モーメントとして数値化するため、あまり意識しなくなります。こんなところを授業で教えていきます。
3. 専門学校への進学動機
専門学校の三次元CADオペレーター育成コースに入学した学生の多くが思うことは、モデリングが出来るようになりたい。
そこに設計したいという考えはありません。
また、彼等を送り出す普通科高校も製造業で働くならCADぐらい操作できた方が良い。絵ぐらい描ければなんとかなるだろう。
あるいは、
シミュレーションも発達してきたし、条件さえ設定出来れば安全についてもソフトウェアが自動的に判定し教えてもくれるだろう。
この様な学生の皆さんに、エンジニアリングを教えております。
困ることは、高校で物理を履修していない、あるいは文系コースで三角関数や微積分などの基礎知識が乏しい学生がいることです。
4. 求められるエンジニアリング教育は?
物理の知識が乏しいためか、小テストを採点していると単位の接頭語を軽くみている学生がいます。例えば、『m(ミリ)』と『n(ナノ)』では、100万倍の違いがあります。
現場では、数値と単位が正しく伝わらないと、事故にもつながりかねません。
このような基本的なことを力学の授業で教えています。
大学の工学部や工業高等専門学校(工業高専)、あるいは工業高校など、理系で学ぶことを題材に考えました。
しかし、授業として成立しないことは明らかでした。
数学や物理の知識が不足していて、苦手意識も強く、結果的に理系進学を断念している学生に、基礎的な話をしても伝わりません。
6. おわりに
製品開発の取組みを進める中小企業の皆さん。
三次元CADのオペレーションに強度シミュレーションの知識や教育を入れて、完成度の高い製品開発にしませんか?
韓国企業でも評価され、月に一週間、技術指導を行っています。
どんな些細なことでもお問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。
お待ちしております。