Post date: Aug 2, 2016 8:16:39 AM
1. はじめに
当店には、以下のような要望を持ってお客様が来店されることがあります。
コンピュータ・シミュレーションで部品が壊れてしまった原因を探りたい。
壊れた部品が、なぜ、このような壊れ方をしたのか、コンピュータ・シミュレーションで再現できないだろうか?
鍛造金型が壊れてしまったが、鍛造時の素材の変形状況や負荷の状態をシミュレーションで再現できませんか?
シミュレーションはコンピュータを使って、対象とする部品(『解析モデル』と呼びます。)に作用する負荷や拘束条件から解析モデル内部の状況を予測する手法です。
そのため破断などを再現することは、大学で管理されているスーパーコンピュータや高度な演算処理が行えるソフトウエアが必要となり費用もかかるため、一部の依頼はお断りしております。
今回は、コンピュータ・シミュレーションで使用する手法を紹介し、当店でできることを紹介していきます。
2. シミュレーションの歴史
1940年代において、軍事利用を目的にコンピュータが開発されてきました。
具体的な利用目的は、砲弾の射出軌道計算です。
3. コンピュータ・シミュレーションとCAE
コンピュータ・シミュレーションツールをCAEと書きました。
このCAEは "Computer Aided Engineering(コンピュータ支援による工学検討)" の略.です。
そして意味は以下のようなことになります。
コンピュータの高い計算能力を利用し、製品設計や工程設計における. 工学的な事前検討を行う手法の総称。
現在、CAEという言葉は、コンピュータ・シミュレーションの代名詞のように使われていますが、以下のように分類されます。
FEM - Finite Element Method(有限要素法). 強度・剛性、振動・周波数応答、熱伝導シミュレーションなど
BEM - Boundary Element Method(境界要素法). 電場、磁場、音響シミュレーションなど
CFD - Computational Fluid Dynamics(数値流体力学). 流体シミュレーション(航空機や船舶など)
その他 ‐ 機構シミュレーション, 工程作業シミュレーション, 制御シミュレーション(matlab/simulink, scilab/XCOS)など
当店でできるコンピュータ・シミュレーションは、FEMと制御シミュレーションとなります。
4. FEMシミュレーションでできること
現在、FEMシミュレーションでできることは、以下の項目になります。
鉄塔や機械部品などの強度を検討する場合は、『静解析』のなかで、『線形解析』を行います。
設計業務の多くは、これで十分対応できますし、当店での取扱いが可能です。
破断のような終局までをシミュレーションする場合、『静解析』のなかで、『非線形解析』を行います。
また、バネのように大きく変形する材料をシミュレーションする場合にも『非線形解析』を行います。
申し訳ありませんが、当店では『非線形解析』には対応しておりませんので、この方面の依頼はお断りしております。
『形状最適化』は、オペレーションズ・リサーチで使われる線形計画法をFEMに組合せ、最適な部品形状をコンピュータ上の計算から予測する手法です。
一方、車などに取り付けられた部品が、走行中の振動により、どのような状態になるのかを予測する手法が『動解析』です。
この中で、共振現象などを予測する場合、『固有値解析』を行います。
また各部品が、どの周波数の振動に影響されやすいのかを予測する手法として『周波数応答解析』があります。
動解析を行う場合、実際の部品で同様の試験を行い裏付けを取る必要があります。
シミュレーションの結果だけで、商品開発を行うことは危険ですし、シミュレーションでは予測できない問題が生じる可能性もあります。
そのため、当店で『動解析』行う場合、お客様に実機による検証方法と結果についてお伺いしております。
このコンピュータ開発が進むなか、1950年代の初期においてボーイング社で有限要素法(FEM)が開発されました。
これはコンピュータを利用してB52の翼型設計で部材強度計算を短時間で精度よく行うために開発されたものです。
以下に、コンピュータ、CAD、そしてコンピュータ・シミュレーションツール(CAE)の歴史概要を示します。
Windows XP の販売(2003年)からコンピュータのダウンサイジングが進み、三次元CADの普及が始まりました。
そのため、三次元データによるシミュレーションの実践的な歴史は浅く、まだ10年ほどしかありません。