からくり仕事 (船舶設備の設計開発 - その1)

Post date: Aug 3, 2016 3:42:45 AM

1. はじめに

地元の商工会からの紹介で、取組んだ仕事になります。

国土交通所が管掌する海上技術安全研究所の研究プロジェクトの業務を支援することになりました。

プロジェクトの目的は、『離島航路の利便性確保と活性化を図る』ことでした。

3.1 想定重量

左図に示されるような簡易的な荷重検討を行いました。

港内を想定していましたが、船舶とすれ違う時に受ける横波などを考えると、15~20°ぐらいのピッチング(前後方向の揺れ)やローリング(左右方向の揺れ)が発生することが想定されます。

このような揺れが発生する場合、慣性の法則により船舶の揺れに対しマイクロバスは元の状態を維持しようとするため、遅れてバスの揺れが発生します。

その場合、一時的ではありますが、揺れ方により3本のタイヤで車両重量を支えることになります。

今回は、初期検討であり安全を見越してタイヤあ3本で重量を支えることを想定し、想定荷重としました。

3.2 検討結果

下図のような基本構造案を考えて、強度計算を行いました。

具体的な根拠などが要求されるため、機械工学便覧などに記載されているグラフなどを使い強度計算書を示しながら説明いたしました。

同じ荷重が負荷される場合、タイヤからの荷重は集中荷重と見なせます。

そのため水密構造にすると設計重量は大きくなり、軽量化に対する要求を満たさないことが分かります。

当初、マイクロバスと同程度の重量で見積をしてきた事業者も、基本構造案②の方での見積でした。

その背景は、高速道路網が整備され海上交通へのニーズが少なくなり、離島部への交通手段確保が難しくなってきたためです。また現在の法律で自動車を乗船させ運搬するためには、鋼鉄製の船舶でなければ許可されません。

(右図を参照願います。)

しかし鋼鉄製のフェリー運行には運営にも経費が大きく事業継続が困難な状況が続くため、地方交付税などにより維持されております。

そこで法改正に向けた社会実験として、FRP(ガラス繊維による強化プラスチック)でピギ―バック式旅客船を建造することになりました。

当店に求められたことは建造されるFRP製船舶の附帯設備として、マイクロバスなどが円滑に乗下船できるランプウェイの開発でした。

2. 求められた仕様

どの製品も同じですが、軽量化は強く求められました。他の事業所でも見積用の設計をさせていたようです。その時点では2.20 (ton)。金額も折り合わなかったようです。右図に仕様提示された時の企画図となります。

当店に要求されたものは1.50 (ton)以下でした。

一方、話を伺ったときに製作を担当する事業者は、既製品の購入を強く求めていました。

しかし、製作側が依頼した事業者が提出してきた見積内容は設計重量で8.00 (ton)となり、お客様が求めるものではありませんでした。

見積した事業者の話では、『移動する重量と同程度の重量でなければ、安全な製品は設計できない}』との考えがあるらしく、

マイクロバスの総重量とほぼ同程度の設計重量になったようです。

設計は当店に任せる方向で進めることになりました。

3. 構造検討

船舶は水密構造で設計されます。

ご依頼されてきたお客様は船舶設計をされてきた方でしたので、附帯設備にも水密構造を基本とした構造が要求されました。

当初は、以下の意見がありました。

  • 薄板を組合せれば軽量で上部な構造になる。

  • 飛行機の翼のようにしたい

しかし、船舶や飛行機の構造は圧力など面に作用する力を受けるために出来た構造です。

一方で、マイクロバスは前後のタイヤからランプウェイに荷重を作用させます。

以下のような検討モデルで構造重量と最大負荷を示しながら、お客様のご提案をお断りさせていただきました。

4. 最後に

以上の結果から、ランプウェイの設計方針としてフレーム構造で進めることを了承していただきました。

このあとも、開発途中に生じる問題が、いろいろと発生します。

この続きは次回以降で、ご紹介いたします。

当店では、企画段階から、製品化までを意識した事前検討をいたします。

ご興味があれば、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。