JR東海373系車両の構造設計
Post date: Mar 11, 2018 5:51:04 AM
~車体の軽量化が生んだ、知られざるメリット~
ワイドビュー特急車両の強度計算
JR東海のエリアでは、いろいろな路線でお目にかかる特急用車両があります。
373系電車。
ワイドビューふじかわ、ワイドビュー伊那路やホームライナー等で使われている車両です。特急だけでなく普通列車にも使われており、汎用性が高いことが特長です。
JR東海のサイトより引用
ワイドビュー車両の知られざる秘密
373系は耐腐食性、無塗装化、軽量化のためにステンレス製軽量車体を主構造としています。
実はこの車両、モノコックボディなんです。
乗用車では一般的ですが、鉄道車両では珍しいことなのです。
いったい、どうやってモノコックボディを実現できたのでしょう。
モノコックボディを支える技術
ステンレス鋼板を重ね合わせてスポット溶接することで、車体の強度を維持しています。
もし、1枚の鋼板で同じ強度を実現しようとすると、2枚重ねるよりも重量が増えてしまうのです。ステンレス鋼板を2枚重ねることで、車体に応力がかかった際に鋼板どうしが擦り合います。
このときに発生する摩擦力を利用し、変形を防止するのです。
2枚の鋼板を重ねることで、1枚のときよりも軽くでき、しかも同じ強度を維持できるというメリットがあります。
軽量化が生んだ効果 その1 省エネ
373系のモーター車と付随車の比率は1:2です。
1両のモーター車がどれだけのモーター無し車両を動かすかという数値です。
通常、通勤電車や特急電車では、この比率は1:0.5~1:1.5です。
373系の比率が1:2ということは、1両のモーター車で2両の付随車を動かすということになります。
モーター車両の両数を減らすことができたおかげで、電力使用量が減るという省エネ効果が出ました。
軽量化が生んだ効果 その2 メンテナンスコスト低減
車体を軽量化することで、レールへの負担が軽くなりました。
その結果、保守費用が下がるというメリットです。
軽量化することで、レールの損傷が減り、メンテナンスに掛ける時間を減らすこともできたのです。
軽量化が生んだ効果 その3 加速度向上
車体が軽くなったことで、加速度も向上しました。
373系が運用開始した当時は、従来の電車よりも強い加速度を誇っていました。
モーター出力向上やインバータ制御技術の導入ももちろんですが、軽量化による寄与が大きいことは明らかです。
373系の事例に見る、強度計算に必要なパラメータ
必要な強度を計算するだけでしたら、フレームを太くするとか、フレーム数を増やすということで基準を満たすことができます。
しかしながら、重量というパラメータを入れることにより、単純な強度計算では済まなくなります。
応用技術研究所では、最適化という観点から、アナログとデジタルの双方を駆使して強度計算し、部材設計を行います。
基礎的な手計算というアナログ技術と複雑なシミュレーションを行うデジタル技術を組合せて行うことで、お客様のご要望にお応えしております。
少しでも気になることがあれば、お問い合せフォームよりご連絡ください。