Post date: Mar 21, 2018 7:15:05 AM
1. はじめに
ちょうど、1年前に『技術者が独立するために必要なこと』という記事を書きました。
アクセス数の推移を見ると、昨年末を境に、2018年に入ってから1日に一回は閲覧されています。
閲覧される皆さんは、開発部門などで活躍されている技術者の皆さんだと思われます。
商品開発はプロダクトアウトからマーケットインに変わり、ユーザーニーズに沿う商品開発を進めてきました。
しかし、最近では方向性を見出せない状況となり行き詰ってしまったのかもしれません。
先行きへの不安から、独立への関心が高いことが分かります。
この記事で、技術者が現役であり続けるためには、以下の三つの要素が必要であることを挙げました。
能力を発揮する環境 - 高額で高度な能力や機能を有する実験設備の確保
生活および事業資金の調達 - 成果を事業化するための資金力
新技術に関する情報収集や再教育の機会 - 誕生する新技術への対応
そして、基本的にはサラリーマンとして企業内で活躍の場を見出すことが大事であることを述べました。
独立には否定的な意見です。
それは、個人の力では困難であり、組織化して対処しなければ解決できない項目だと思われたからです。
2. 製造(ものづくり)に関係する日本での監督官庁
話を別の視点で進めます。
日本で製品開発を主導する監督官庁はどこだと考えますか?
実は、文部科学省です。
経済産業省では?
そんな声も聞こえます。
自分も、当初は経済産業省だと考えていました。
しかし、科学技術庁も文部科学省に取り込まれました。
技術士の管掌省庁も文部科学省です。
技術(Engineering / Technology)は科学(Science)をベースに生まれるとの考え方で、文部科学省のようです。
各省庁の役割分担をまとめると以下のようになります。
これを見て、なんとなく納得される部分もあるのではないでしょうか?
文部科学省 - 基礎研究、原理証明、製品仕様、設計図面
(支援ツール) サポイン事業
大学などの研究成果を応用し、製品仕様や設計図面としてまとめられる。
経済産業省 - 研究開発成果の事業化、試作品の量産置換、製造・販売活動の支援
(支援ツール) ものづくり補助金、持続化補助金
設計図面から商品を製造し販売するまでの過程を支援する。
厚生労働省 - 製造現場の人材育成、技能検定試験による能力認定
(支援ツール) 労務関係の助成金
製造業で必要な人材の能力開発、育成
一般的に言われる『ものづくり補助金』は、経済産業省が予算化し研究成果(製品仕様や設計図面)の量産化を支援する補助金です。
そのため、『最新の成果を量産化する場合、最新の設備が必要。』との考えで、新しい商品開発や技術確立に対する最新設備の導入を補助しています。
したがって、この補助金事業には、量産置換には含まれない仕様開発や設計図面の作図作業は事業内容として認められていません。
この枠組みが理解できると、技術者として独立する場合、キャリアに合わせて目指すべき方向が見えてきます。
3. 技術者が独立して目指すべきところは?
話を、技術者の独立に戻しましょう。
独立を考える場合、ご自身のキャリアに合わせて目指すべき方向が見えてきます。
製造現場で生産技術に関わって来られたのなら、中小企業診断士などを取得し、現場改善を通じた経営効率支援などの事業化が可能だと思います。
また、製造技術で技能などの向上に努めておられたのなら、技能士を取得し、後進の技能指導など技能指導員として教育事業を興すことが可能だと思います。
開発部門に所属し、設計や商品試験などに関わっていらっしゃったのなら、公共の研究機関を利用しながら中小企業の製品開発を支援することが可能です。
技術士の資格も所持していれば、海外で就労する場合でも、『高度な能力を有した技術者』としてビザ申請も可能になります。
4. 自分自身の独立について
自分の場合、独立前に仕事を依頼して下さる事業者を見つけ、話も進んだので独立することにしました。
しかし、独立直後に、仕事の話は消滅。
しばらくは宅配のアルバイトをしておりました。
地元の商工会の紹介で船舶設備の仕事が入りましたが、なかなか検収されず、預金残高が数万円になり頭を抱えたこともあります。
その後、以前の勤務先から仕事をいただけるようになりましたが、海外企業との取引を嫌われてしまい手を引くことにしました。
現在、成約した海外企業との技術支援契約は技術士を対象としたマッチング事業で得られた仕事です。
海外での技術支援や就労は、就労ビザ取得時に技術者としての専門性と能力について証明が必要になります。
職務経歴書や履歴書、あるいは勤務先が有名企業だったとしても、その企業名だけでは個人の能力の証明にはなりませんでした。
5. まとめると
技術者が独立を考えた場合、キャリアを活かした方向性を示しました。
しかし事業が継続するためには、創業期の事業資金と、あなたを信頼して仕事を依頼してくださる事業者の存在が不可欠です。
また一人で事業を展開する場合、受注した仕事だけでなく事業責任者として確定申告に向けた経費管理もしなければなりません。
営業活動もしなければ、仕事量を増やすことも出来ません。
独立すると、組織の中で任されていた仕事だけではないのです。
独立を意識したならば、信頼して下さる事業者との関係を確立することをお勧めします。
独立は、仕事が入るような関係を作ってからでも遅くはありません。
また、複数の事業者との関係構築を進めた方がいいでしょう。
事業者の経営事情で仕事の話が消滅することもあります。
あなたに任せたい気持ちはあっても資金がなければ、仕事を依頼することもできないのです。
まとめとして、いろいろと書きましたが、技術者が独立して自由を得たとしても、限られた条件の下でしか幸せになれません。
独立は慎重に、独立したら、あなたを頼る事業者のために全力で仕事をしてください。
独立を考える技術者の皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。
6. 独立についてのご相談
独立の支援はできませんが、ご相談は伺わせていただきます。
お問い合わせフォームよりご連絡下さい。
組織内や職場内では話せない相談内容です。
事前にご連絡いただければ、事務所にて、ご相談も承ります。
なお、独立に向けた仕事の紹介や斡旋はできません。地元の商工会議所や商工会にご相談下さい。
ご相談内容をお伺いし、適切なアドバイスをさせていただくだけですので、その点は、ご承知おきください。