技術者の独立
1. はじめに
『フリーランスのエンジニアになりたい』あるいは『憧れている』。そんな方は多いのかもしれません。一方で勤務先からの評価が自分の想像より低いと感じ、独立を考える方もお見えになるでしょう。
私自身は、技術士の資格取得を機にフリーランスとして独立いたしました。その後、経費管理を厳密にしようと思い個人事業を法人化しました。
独立して7年。 法人になって6年が経過します。
これまで体験してきたことを、将来を考えて独立を考えているエンジニアの皆さんの参考になればと思い、体験の一部をご紹介いたします。
2. 技術士資格の取得について
技術士資格を取得しようとした動機は、以下のような甘い見通しからでした。
『技術士会や所属する会員から、仕事を融通してもらえるかもしれない…。』
技術士会は人的ネットワーク形成と自己研鑽を主な目的としている場です。そのため業務受託に関しては開拓途上にあり、現在でも融通していただけるほど盛況な状況ではありません。
また『技術士』の管掌官庁は文部科学省であり産業界との接点が薄いため、資格に対する知名度は低いです。そのため技術士を名乗っても、収入につながる仕事はありませんでした。
一方、企業で求められるものとしては開発管理や商品企画であり経営的な手法や視点です。関連する従業員に対しては、必要となる管理ツールを使い経費支出を抑え、利益を増やせるようになることです。したがって、専門的な技術に対する指導について問合せを受けることはありませんでした。
やはり企業にとって重要なことは経営課題の解決となるため、中小企業診断士の方々と組み補助金申請などのお手伝いをすることが多いです。
メリットは、技術者としての能力を技術士法により担保していただけることかもしれません。特定の独占業務はありませんので、国内でフリーランスとしてのメリットはあまりありません。
3. 経費の管理
事業活動を始め、仕事を受託すると様々な経費が発生します。
最初のうちは『領収証を集めて整理しておけば良いのかな?』と考えていました。
実は2014年1月から確定申告の色(白色か青色)に関係なく現金出納帳の記載が義務化されています。また2020年からは電子申告が義務化されるようです。
個人事業者として独立したときに青色申告会で記帳の仕方(簿記)を勉強しました。法人化してからも記帳は自分ですべて行い、月度と期末の決算のみ税理士の先生にお願いしています。
これから独立を考えている方は、簿記3級程度の知識と実務能力が必要だと思います。
便利な記帳ソフトもあります。しかし簿記実務に関する知識がないと正確なデータ入力ができません。確定申告時に困らないように、独立前に勉強されることをお勧めします。
4. 自己資金
仕事の見通しがあって独立した場合、年間売上額も予測できます。
私の場合、当てにしていた仕事がサラリーマンを辞めた日に流れてしまいました。
その後、紹介していただいた開発の仕事は7カ月間、お客様に仕様確定作業で拘束されてしまい、他の仕事を入れられませんでした。そのため、拘束期間は無収入となり貯金の大半を取り崩すことになりました。
法人化してからは、期末決算時に収入と経費支出がほぼ等しくなりました。しかし次の売上まで法人としての手元に現金がないため個人の貯金を取り崩し、法人市県民税の納付や税理士への決算報酬の支払いを行っていました。
独立をする場合、このような反省を踏まえ、自己資金は1年は無収入で生活できる貯金は必要だと思います。また法人事業を5年継続し資本金を創業当初の50万円から300万円に増資することができました。ただ増資した資金は、個人の貯金から法人の負債を補てんするために拠出した5年間の累積借入金を法的な手続きを経て資本金に振替えました。
このような事実を踏まえ、先の無収入に備えた貯金のほかに約300万円の資本金が必要だと思います。目安としては約500万円の自己資金は準備しておいた方が良いかもしれません。
参考までに、経費支出の具体的な内訳を挙げていくと以下のようなものがあります。
仕事を得るための営業経費
県民市民税(損益が計上されても最低納付額が決められています)
給与・報酬とは別に法人が負担する年金保険、健康保険などの社会保険料
日々の生活費 (家庭での家事費や水道光熱費、通信費など)
自己資金については慎重に見積り、ご自身でご判断下さい。
5. まとめ
大事な点として以下のようなことを説明いたしました。
技術士の資格だけでは、仕事は得られません。
経費を税務書類として記帳管理する簿記3級程度の能力
仕事が入らなくても事業を継続し、生活が維持できる自己資金
6. 技術者が独立するために必要なこと
最後に、エンジニアが独立するために必要な要素を考えてみました。
大学の工学部や工業高専を修了した学生、工業高校を卒業した生徒の多くは、就職した企業で事業維持・拡大に必要な技術開発を任されることになります。
この技術開発に必要な開発費用、ご自身の日々の生活費、これらは事業者が事業経費や従業員給与として用意します。またエンジニアとして成長に必要な経験は、日々の研究開発業務から得られます。必要に応じて教育の機会も与えられます。
これらの要素を自力で用意できるようでしたら、エンジニアとして独立しても大丈夫だと思います。ど
企業の中にいると当たり前になってしまい忘れてしまいがちですが、エンジニアとしての能力はお勤めの企業が投資して用意した環境と構築してきたビジネスモデルの中ではぐくまれる側面もあります。
エンジニア個人の能力が優れているからではありません。
また企業経営の立場から見ますと、エンジニアに対して求めることは事業としているビジネスモデルを改善し活性化することです。エンジニアとしては開発成果などの評価に重点を置きますが、企業経営をする側から考えるとビジネスモデルへの影響具合が評価点となります。目線の違いを理解されると、独立に向けた方向が変わるかもしれません。
現在、当社も取引先企業のビジネスモデルへの影響を考えながら事業展開を考えています。独立して成功したエンジニアも多くいますが、その方々はご自身の技術を製品やサービスにしてビジネスモデルを構築出来ている方々です。経営者としても、エンジニアの一人としても戦略のない独立はお勧めいたしません。
お悩みのことがあれば、こちらのお問い合わせよりご連絡下さい。