溶接部破断の原因検討と対策

2018/03/10 3:41 に Teruhiko Hinaji が投稿   [ 2018/03/10 3:54 に更新しました ]
1. はじめに

工場内で製品の搬送に使用しているコンテナーが納品して6カ月で破損してしまう事象が発生しました。具体的な状況は以下に示されるような写真のとおりですが、車輪取付ブラケットの溶接部分が破断してしまうというものでした。


この製品を納品した社長から相談された内容は、以下の通りです。

『納品先から対策案を要求されている。修理内容の根拠を示さないと修理は認めないと言われてしまった。
具体的には、溶接部分の強度計算をして、修理内容が十分な強度が確保できていることを説明しなきゃならん。
溶接強度を計算して提出して欲しいと言われても、今まで経験で仕事してきたから困っている。』

こんな相談を受けて溶接部の強度計算書を作成し、納品先の承認を得て、修理することができました。
以下に、強度計算書の内容を説明いたします


2. 溶接部破断の原因

車輪が支えるコンテナー全体の重量(反力)と溶接部に作用するせん断力がモーメントで釣合っているため、モーメントの中心を以下に示される車輪の配置や溶接長から計算しました。


また、車輪は固定輪と自在輪の二種類が取り付けられていたため、以下の三つの場合について、それぞれ、モーメントの釣合いから破断した溶接部分のせん断応力を計算いたしました。
  1. 固定輪
  2. 自在輪(コンテナーの外側を向いている場合)
  3. 自在輪(コンテナーの内側を向いている場合)
機密保護の観点から破断部分のせん断荷重を示すことはできませんが、自在輪の位置により溶接部に作用するモーメント
が変化します。そのため、自在輪の位置により、破断した溶接部に作用するせん断力は最大1.5 kN(約150 kg)程度の変化が生じることがわかりました。
破断の原因は、このせん断力の変化による疲労です。
また、想定される使用条件をS-N疲労線図に当てはめてみると、6カ月程度で破断することもわかりました。



3. 検討に用いた強度規準

多くの場合、強度計算書を作成すると、かならず質問されることがあります。

『強度判定の根拠は、どのようなものですか?
御社で測定した結果を元に判定されているのですか?
法的な根拠を示していただけませんか?』

弊社では、建築基準法施行令 第90条 第一項(許容応力度)、第96条(材料強度)、および平成12年建設省告示第2464号を強度判定の根拠としております。

この場合も、同じような質問が社長の方に投げかけられたそうですが、建築基準法施行令の強度判定に基づいていると回答して納得していただいたようです。
JIS規格では材料の規格として降伏点の条件が示されておりますが、それは材料としての条件です。
静的、動的や引張、圧縮、せん断などの負荷状況による強度要件とは異なりますので、素直に利用することできません。


4. 対策について

以上の強度検討結果を元に、以下のようなL字形のブラケットと溶接位置を設計しました。
また、対策後の強度計算結果もまとめ、問題がないことを説明し修理を行なうことができました。



破断原因を検討する場合、破断面をマイクロスコープなどで観察することも必要です。
疲労破壊の場合、特徴的な破断面が観察されるからです。
今回は、写真と溶接位置を示す簡単なポンチ絵しか提供されなかったため、無理のない範囲で前提条件を設け、計算のみで破断原因の検討を行いました。


5. お問い合わせ先

同じように、破断部の強度検討でお困りでしたら、お問い合せフォームよりお気軽にお問い合わせください。

株式会社 応用技術研究所 (刃金からくり屋)
代表取締役 日名地輝彦(ひなぢ てるひこ) 技術士(機械)
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