営業日誌(ブログ)


三次元CADデータの活用事例

2018/06/10 22:34 に Teruhiko Hinaji が投稿

キーワード : 三次元CAD, CAE, リバースエンジニアリング, コンカレント・エンジニアリング, WEB 3D

企業が抱える課題のうち生産技術の革新と人材育成に対して次の二点にテーマを絞り、3次元CADデータの活用による課題解決に取り組みました。
一点目は開発製品における品質仕様の早期確定であり、二点目は作業指示書などのWEB3D化です。
現状においても3次元CADデータの活用は模索が続いており、その一例となればと思い、過去に取り組んだ内容をご紹介いたします。


1. はじめに

Windows95™の登場により、1990年代後半から情報機器のダウンサイジングと高性能化が進みました。
同時にインターネットの
普及も始まり、それに伴って消費者の嗜好も多様化が進みました。
また、通信速度の高速化に合わせて消費者の嗜好の変化も速くなっていきました。

一方、これらの変化に対応するため、自動車業界では開発期間を短くする施策が実践されてきました。
その一つとして三次元CADやCAEによるコンカレント・エンジニアリングや試作レス開発が模索されました。
しかし、生産技術部門や製造部門まで、三次元CADデータの利用を目的とした環境整備が追いつかず、当初の効果は乏しかったように感じます。

2000年以降、ソフトウエアの利便性が急速に向上してきました。
具体的には、三次元CADデータの閲覧ツールの充実化、データ変換精度の向上、あるいはCAMやCAEなどの各種アプリケーションが統合化された三次元CADの登場などが挙げられます。このような背景のなか、開発製品における品質仕様の早期確定や作業指示書のWEB 3D化に対し、三次元CADデータを活用し生産技術の革新や人材育成などの課題解決に取り組みました。


2. 技術的な課題

1) 企業の課題

1996年から2008年まで静岡県浜松市にある自動車部品メーカーに勤務しておりました。

この会社は、コスト削減という観点から2003年頃より東南アジアの各国に生産拠点を設けていました。

一方、国内においても2005年頃から非正規従業員(派遣社員、パート従業員)を随時採用し始めました。
その結果、2008年において非正規従業員の比率は全従業員の51.9%になりました。また、製造部に所属する従業員のうち60.7%が非正規従業員であり、そのうち59.3%が外国籍でした。(右図.『従業員の構成比 (2008年3月末時点)』 参照) そのため、日本語による意思疎通に問題がありました。

製造部で採用された非正規従業員のうち、54.3%は勤続2年以下の従業員であり、この状況は2006年から続いていました。 (右図. 『
製造部非正規従業員の勤続年数』 参照)。
そのため、製品の品質維持や現場の技術力向上は難しい状況でした。
そこで、言語に左右されない、しかも短時間で理解できる作業手順書の必要性が高くなってきました。

2) 業務上の課題

1996年から2001年まで、開発部品のFEM解析を主な業務としながら、コンカレント・エンジニアリングなどの手法確立に取り組んでいました。また、2002年からは研究部門に異動し、社内外で発生した不良品や市場で発生したクレーム品に対し原因解析を行っていました。(下図.『製品開発・生産準備業務の概要』 参照)

その中で多くの時間を費やしたのは、次の2点です。

 ・ 三次元的に変化する曲面などの形状測定や形状確認
 ・ 原因解析を通じて得られた知見を社内教育用の資料として視覚的に理解し、多角的に活用できるようにすること

一方、製品の軽量化、コンパクト化、低コスト化の要求に対し、製品を構成する部品の多機能化が進みました。
そのため部品の小型化、高精度化や形状が複雑化し寸法測定が難しく、製品の精度把握が困難な状況になってきました。
結果として、製品開発や生産準備における製品精度が反映不足となり、原因解析で量産品の品質問題として形状測定などを行いながら解決を図っていました。

そこで、早期に品質仕様を確定し、製品図面に反映させ、開発期間の短期化や多品種少量化へ対応することが強く望まれるようになってきました。


3. 課題解決への取組み

1) マニュアルのWEB3D化1)

言語に左右されず、短時間に理解されるような作業手順書作成にあたりWEB3D技術を利用することにしました。
このWEB3Dは、インターネット環境で三次元の形状データに関する操作や、三次元アニメーションを表示させる技術のことを示します。
また、WEB3Dで用いる三次元の形状データはXVL (eXtensible Virtual world description Language) 技術を利用し、三次元CADのデータを元に作成いたしました。このXVLは、三次元形状のデータを軽量化する技術であり、元のCADデータを1/100程度に軽量化することができます。
そのため、インターネット環境でのデータ流通が容易になります。

一方、WEB3Dは音声などのファイルも操作が可能です。
そのため、作業内容を説明した音声ファイルを英語やポルトガル語などで作成し、使用言語の選択肢を設けることも可能となります。
以上から、右図.(『WEB3Dによる作業手順書の事例』)に事例として示される言語に左右されにくい作業手順書を作成することができました。

2) 製品の精度把握

三次元的に曲率が変化する幾何形状の測定が求められるので、主に三次元スキャナーを使用しました。また製品に対する要求精度に応じて測定ツールを選択し形状を測定しました。このようにして測定した幾何形状については、次のような二つの方法で評価しました。
  • 三次元CADデータとの差異を比較する絶対的な方法
  • ロット間や異なる生産拠点間などの差異を比較する相対的な方法
さらに高い精度が要求される場合には接触式の測定器を使い、EXCELのマクロなどで測定データの収集と解析を行うプログラムを製作しながら評価を行いました。

3) 三次元CADデータの活用

三次元CADデータを用いて前節の課題解決に取り組みました。具体的に製品開発および生産準備における三次元CADデータの活用について目指す方向として改めて整理しました。(図6.『目指す方向とイメージ』 参照)
この目指す方向では前節の取組みに対し、次のように課題を拡げました。
  • 設計者の意思や意図を正確に伝える手段としてマニュアルのWEB3D化を検討
  • 製品の精度把握としてのリバースエンジニアリング
  • 三次元CADデータのモデリングやFEMなどの先進的な活用
  • デジタル・モックアップによる製品・設備開発
三次元CADデータの利用範囲を拡げることで業務効率の向上がはかれ、コンカレント化が大きく進むと考えられました。一方、以上の課題解決については設計部門の改善を進めるのではなく、現実に発生した不具合などの品質問題を主な事例とし、不具合発生を防止する方策として上流の設計部門改革に取組みました。


4.取組み事例

1) WEB3D化の取組み

設計者の意思や設計意図を伝える手段として、WEB3Dを活用しました。その結果、試作の製作前に問題点が抽出され解決されることが多くありました。(右図. 『WEB3Dの取組み事例』 )


2) リバースエンジニアリングへの取組み

製品の精度把握以外に、他社製品の調査目的でリバースエンジニアリングに取り組みました。
苦労した点は、効率よく形状測定を行うための試料固定方法と測定後の形状作成(モデリング)です。
試料の固定には、フレックスサポートを使いました。また、得られた点群データから形状を作成するには、点群を面で捉えるデッサン力も必要になります。(右図. 『リバースエンジニアリングの取組み事例』)


3) 三次元CADへの取組み

三次元CADデータに寸法線などを付加し、設計図面とする動きがあります。従来の製図に対し3D図面と呼ばれていますが、新しい利用方法として取組みました。
また、PDQ(Product Data Quality)についても、モデルを試作し体感できるようにしました。(右図. 『三次元CADへの取組み事例』)


4) デジタル・モックアップへの取組み

シミュレーション技術により、製品組立や動作検証など三次元CADデータで行い、問題点の解消や課題抽出後に試作の製作を行いました。
(右図. 『デジタル・モックアップの取組み事例』)


5.おわりに

弊社での開発業務は、以上の成果を背景に行われています。
製品の開発設計は三次元CADでモデリングとFEMシミュレーションを基本に行います。
その成果として、国内では製作実績のない船舶への搭載設備開発を設計ミスなく納品することが出来ました。
結果的に試作品がそのまま製品として納品されました。

また、この結果が評価され、海外企業からオファーがあり、1年間、立体造形装置の開発支援を行いました。

この分野は三次元CADやFEMシミュレーションの技術をそれぞれ保有していても、これらの技術を組合せて課題を解決するエンジニアリング的な知見が必要になります。
その部分は現場の業務経験だけではなく、三次元CADやFEMシミュレーションについても理論的な知見が必要になります。

まだまだ、関心が高い分野ですのて、ご意見・ご質問やご相談などがございましたら、お問合せフォームよりご連絡下さい。
お待ちしております。

3次元造形装置(3Dプリンター)の開発

2018/04/15 18:54 に Teruhiko Hinaji が投稿   [ 2018/05/20 18:01 に更新しました ]


1. 名古屋 設計・製造ソリューション展 2018への出展

先日、4月11日(水) ~ 13日(金)に、愛知県名古屋市の『ポートメッセなごや』で開催された『名古屋 設計・製造ソリューション展 2018』に、技術支援を行っている韓国企業が出展いたしました。

展示会に出展されましたので、その
時の様子をお知らせいたします。
当社ブログの中では技術支援の事実のみを記載しておりましたが、補間するような情報となります。


2. 展示内容

展示されている造形装置はSB400で、造形範囲は一般的なA3用紙サイズ(W=300, L=420, H=250 : 単位 mm)の装置です。

これは、凝固剤で鋳造用の砂を固め鋳造型を造形する方式です。
右に展示ブースの様子と造形品サンプルの写真を掲載いたします。


3. 日本ではあまり注目されていないBinder Jet方式

日本では、3Dプリンターの話になると、FDM(熱溶解)方式やSLA(光造形)方式が中心となります。その理由は特許も期間が終わり抹消していることから装置の低価格化が進み、導入に対する敷居が低いからだと思われます。
また一時的に注目された金属プリンターやBinder Jet方式は装置が高額です。
それに造形した部品に対する市場ニーズも未知の部分が多く、導入については見送られるようです。

一方、世界的には三次元データから鋳造用の砂型が造形できるため、Binder Jet方式が注目され、世界的に導入が進んでおります。
また大型の鋳造部品も可能にするための開発競争も始まっています。

しかし基本特許が取得されており、思うような製品開発が簡単には出来ない状況です。
しかも、市場として想定される北米やヨーロッパ諸国には申請されております。
アジアでは、2~3年前ぐらいから中国、韓国にも出願され始めております。
その一方で日本には出願されている様子が確認できておりません。


4. 今後の展開

現在、Sentrol社で、大型化に向けた装置開発を進めております。
大型化に必要な技術支援を私の方で行っています。
海外企業の特許を回避しつつ、低価格で目的を達成する見通しも見えてきました。

海外企業で技術支援を行うようになってから、日本の製造業を俯瞰することが多くなりました。間違いなく世界の潮流から、日本の製造業は取り残されております。
すでに、将来については何も描けない状況で心配しております。

どのような質問や意見でも構いません。
製品販売についても、契約先を通じて代理店をご案内いたします。
ご意見やお聞きになりたいことがあれば、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。


よろしくお願いいたします。


Sentrol 社 展示ブース (名古屋DMS2018, ブースNo. 19-51)


造形サンプル (Binder Jet 方式)


造形の様子 (SB400)

(参考)


強度設計とは?

2018/04/03 6:54 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに

当社は有限要素法による強度シミュレーションを請負っています。
そのため、『機械設計』とは別に『強度設計』という言葉も使います。

同じ『設計』とは言っても、内容は大きく異なります。
一般の方に分かり易く説明しようと思います。


2. 強度設計とは

フレーム鋼材(H形鋼、I形鋼、アングル材など)を使って作業台を設計しています。
下図の矢印について、以下のように定義します。
  • 緑色の矢印() に荷重が負荷されます。
  • 赤色の矢印()部分の変位を拘束します。

『強度設計』とは、荷重が負荷される緑色の矢印位置から赤色の矢印位置まで、とのような大きさと向きの荷重をどのように伝えるかを考えて形状にしていく作業を『強度設計』と言います。

そして、荷重を伝える経路の事を荷重伝達経路と言います。

下図は、一次元要素を使って構築したモデルです。
ただ、線を描いてつなげただけの形状モデルのように見えます。
これが荷重伝達経路となります。

しかし、以下に示されるようなウィンドウで、荷重伝達経路の断面形状と材料特性が設定されています。
断面形状の大きさや形状、そして仕様する材料により荷重経路を伝達する荷重の大きさが変わります。

なお、
具体的な数値については、お見せすることはできません。

断面形状の設定ウィンドウ


材料特性の設定ウィンドウ


このモデルに対し、断面の形状を変化させ、強度的な満足するかどうかを検討していきます。

まず負荷する荷重を求めるために、機械力学が必要になります。
また、計算により得られる応力値より降伏状態や破壊などを判断したり、曲げに対する剛性を理論的に高めるために材料力学の知識も必要となります。


3. まとめ

このような検討は、概念設計や基本設計の時に行われます。
基本設計出強度・剛性に関する基本的な要件を満足し、そこから詳細設計に設計のステージが移ります。

最近では、三次元CADで作成されたモデルを利用したシミュレーションが盛んに行われております。その時点では詳細設計に移行しており、なかなかシミュレーション主導による設計が出来ません。

構想段階の概念設計時や基本設計のステージで積極的に行う設計です。

なお、静岡産業技術専門学校で、この辺の内容を{整理し、まとめて『力学』として授業を行っております。興味がありましたら、お問い合わせフォームより、お問合せ下さい。

Scilab 6.0.1 Release

2018/03/26 7:05 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに

2018年2月15日に、Scilab 6.0.1がリリースされました。
かなりのバグがあったようです。

以下のページで、リリースについて紹介されています。


日本語にすると、以下のようになります。


2. Scilab 6.0.1 リリース

多くのバグが修正されました !
Scilab 6.0.1 のリリースをお知らせいたします !
この最新のバージョンを https://www.scilab.org/download/6.0.6 からダウンロードしてください。




Scilab 6.0.1は Scilab 6.0 開発系統の最初の修正版です。
特にバージョン 5.5.2 から不足した以下の機能の実装と不具合(バグ)の修正です。
  • コーナーケース(構文、グラフィックス、ファンクション、など…)でのクラッシュを修正
  • Xcos モデルの変換と編集の改善
  • ヘルプのページとデモの追加
変更点と修正されたバグの全リストについては、CHANGESファイルを見てください。


3. インストールした結果

支障なくインストールはできました。
しばらく、使ってみたいと思います。


技術者(研究者)が独立して目指すべきところは?

2018/03/21 0:15 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに

ちょうど、1年前に『技術者が独立するために必要なこと』という記事を書きました。
アクセス数の推移を見ると、昨年末を境に、2018年に入ってから1日に一回は閲覧されています。
閲覧される皆さんは、開発部門などで活躍されている技術者の皆さんだと思われます。


商品開発はプロダクトアウトからマーケットインに変わり、ユーザーニーズに沿う商品開発を進めてきました。
しかし、最近では方向性を見出せない状況となり行き詰ってしまったのかもしれません。
先行きへの不安から、独立への関心が高いことが分かります。

この記事で、技術者が現役であり続けるためには、以下の三つの要素が必要であることを挙げました。
    • 能力を発揮する環境 - 高額で高度な能力や機能を有する実験設備の確保
    • 生活および事業資金の調達 - 成果を事業化するための資金力
    • 新技術に関する情報収集や再教育の機会 - 誕生する新技術への対応

そして、基本的にはサラリーマンとして企業内で活躍の場を見出すことが大事であることを述べました。

独立には否定的な意見です。
それは、個人の力では困難であり、組織化して対処しなければ解決できない項目だと思われたからです。


2. 製造(ものづくり)に関係する日本での監督官庁

話を別の視点で進めます。
日本で製品開発を主導する監督官庁はどこだと考えますか?

実は、文部科学省です。

経済産業省では?
そんな声も聞こえます。
自分も、当初は経済産業省だと考えていました。

しかし、科学技術庁も文部科学省に取り込まれました。
技術士の管掌省庁も文部科学省です。
技術(Engineering / Technology)は科学(Science)をベースに生まれるとの考え方で、文部科学省のようです。

各省庁の役割分担をまとめると以下のようになります。
これを見て、なんとなく納得される部分もあるのではないでしょうか?

    • 文部科学省 - 基礎研究、原理証明、製品仕様、設計図面
    •           (支援ツール) サポイン事業
    •           大学などの研究成果を応用し、製品仕様や設計図面としてまとめられる。
    • 経済産業省 - 研究開発成果の事業化、試作品の量産置換、製造・販売活動の支援
    •           (支援ツール) ものづくり補助金、持続化補助金
    •           設計図面から商品を製造し販売するまでの過程を支援する。
    • 厚生労働省 - 製造現場の人材育成、技能検定試験による能力認定
    •           (支援ツール) 労務関係の助成金
    •           製造業で必要な人材の能力開発、育成

一般的に言われる『ものづくり補助金』は、経済産業省が予算化し研究成果(製品仕様や設計図面)の量産化を支援する補助金です。
そのため、『最新の成果を量産化する場合、最新の設備が必要。』との考えで、新しい商品開発や技術確立に対する最新設備の導入を補助しています。
したがって、この補助金事業には、量産置換には含まれない仕様開発や設計図面の作図作業は事業内容として認められていません。

この枠組みが理解できると、技術者として独立する場合、キャリアに合わせて目指すべき方向が見えてきます。


3. 技術者が独立して目指すべきところは?

話を、技術者の独立に戻しましょう。
独立を考える場合、ご自身のキャリアに合わせて目指すべき方向が見えてきます。

製造現場で生産技術に関わって来られたのなら、中小企業診断士などを取得し、現場改善を通じた経営効率支援などの事業化が可能だと思います。
また、製造技術で技能などの向上に努めておられたのなら、技能士を取得し、後進の技能指導など技能指導員として教育事業を興すことが可能だと思います。

開発部門に所属し、設計や商品試験などに関わっていらっしゃったのなら、公共の研究機関を利用しながら中小企業の製品開発を支援することが可能です。
技術士の資格も所持していれば、海外で就労する場合でも、『高度な能力を有した技術者』としてビザ申請も可能になります。


4. 自分自身の独立について

自分の場合、独立前に仕事を依頼して下さる事業者を見つけ、話も進んだので独立することにしました。

しかし、独立直後に、仕事の話は消滅。
しばらくは宅配のアルバイトをしておりました。

地元の商工会の紹介で船舶設備の仕事が入りましたが、なかなか検収されず、預金残高が数万円になり頭を抱えたこともあります。
その後、以前の勤務先から仕事をいただけるようになりましたが、海外企業との取引を嫌われてしまい手を引くことにしました。

現在、成約した海外企業との技術支援契約は技術士を対象としたマッチング事業で得られた仕事です。
海外での技術支援や就労は、就労ビザ取得時に技術者としての専門性と能力について証明が必要になります。
職務経歴書や履歴書、あるいは勤務先が有名企業だったとしても、その企業名だけでは個人の能力の証明にはなりませんでした。


5. まとめると

技術者が独立を考えた場合、キャリアを活かした方向性を示しました。
しかし事業が継続するためには、創業期の事業資金と、あなたを信頼して仕事を依頼してくださる事業者の存在が不可欠です。

また一人で事業を展開する場合、受注した仕事だけでなく事業責任者として確定申告に向けた経費管理もしなければなりません。
営業活動もしなければ、仕事量を増やすことも出来ません。
独立すると、組織の中で任されていた仕事だけではないのです。

独立を意識したならば、信頼して下さる事業者との関係を確立することをお勧めします。
独立は、仕事が入るような関係を作ってからでも遅くはありません。

また、複数の事業者との関係構築を進めた方がいいでしょう。
事業者の経営事情で仕事の話が消滅することもあります。
あなたに任せたい気持ちはあっても資金がなければ、仕事を依頼することもできないのです。

まとめとして、いろいろと書きましたが、技術者が独立して自由を得たとしても、限られた条件の下でしか幸せになれません。
独立は慎重に、独立したら、あなたを頼る事業者のために全力で仕事をしてください。

独立を考える技術者の皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。


6. 独立についてのご相談

独立の支援はできませんが、ご相談は伺わせていただきます。
お問い合わせフォームよりご連絡下さい。

組織内や職場内では話せない相談内容です。
事前にご連絡いただければ、事務所にて、ご相談も承ります。

なお、独立に向けた仕事の紹介や斡旋はできません。地元の商工会議所や商工会にご相談下さい。
ご相談内容をお伺いし、適切なアドバイスをさせていただくだけですので、その点は、ご承知おきください。


名古屋ボストン美術館の構造計算 【強度、振動】

2018/03/10 22:35 に Teruhiko Hinaji が投稿

  • 名古屋ボストン美術館とは
名古屋市内でも有数の繁華街である金山。
駅前にそびえ立つ金山南ビルの中に、アメリカ ボストン美術館の姉妹館である名古屋ボストン美術館があります。


支柱が無い

外観を見ると、一風変わったデザインが目に留まります。
3~5階部分が付き出る構造となっているからです。
しかも、支柱が無いのです。




最適なフレーム設計をすれば、このような構造は可能です。
しかし、強度基準を満たすだけでは済まなかったのです。

  • 強度以外に必要な基準とは
ボストン美術館から借りている大事な展示品です。
展示品搬入時にフォークリフトを使うため、事前にフォークリフトが動くことで生じる床面の振動や、ビル全体への影響を構造シミュレーションで予測してほしいというご要望があったのです。

クライアントの設計課題は重量物を持ったフォークリフトが移動するときに生じる、振動を考慮した構造にすることでした。
また、支柱が無いビルから張り出したフロアの設計なので、慎重に進めたかったようです。

  • 強度計算プラス振動のシミュレーション
強度計算では一般的な片持ち梁の構造です。
また振動のシミュレーションも実施し、指定の重量物を搬入・搬出する際に予測される振動について結果を報告することができました。

  • 振動というパラメータ
強度計算では、要求の応力に耐えるという目的の他に、振動に対する評価も重要になる場合があります。

よく知られているものとして、橋梁の設計があります。
強風や多数の自動車往来により、橋が共振して崩壊した例もあるくらいです。
最近では、地震振動に対する強度計算も行いました。


㈱応用技術研究所 (刃金からくり屋)では、お客様のご要望だけでなく、専門家としての視点で重要なパラメータを見つけ、ご提案しております。

気になることがあれば、お問い合せフォームより、お気軽にお問い合せください。

JR東海373系車両の構造設計

2018/03/10 21:51 に Teruhiko Hinaji が投稿

~車体の軽量化が生んだ、知られざるメリット~

  • ワイドビュー特急車両の強度計算
JR東海のエリアでは、いろいろな路線でお目にかかる特急用車両があります。
373系電車。
ワイドビューふじかわ、ワイドビュー伊那路やホームライナー等で使われている車両です。特急だけでなく普通列車にも使われており、汎用性が高いことが特長です。


JR東海のサイトより引用


  • ワイドビュー車両の知られざる秘密
373系は耐腐食性、無塗装化、軽量化のためにステンレス製軽量車体を主構造としています。
実はこの車両、モノコックボディなんです。
乗用車では一般的ですが、鉄道車両では珍しいことなのです。
いったい、どうやってモノコックボディを実現できたのでしょう。

  • モノコックボディを支える技術
ステンレス鋼板を重ね合わせてスポット溶接することで、車体の強度を維持しています。

もし、1枚の鋼板で同じ強度を実現しようとすると、2枚重ねるよりも重量が増えてしまうのです。ステンレス鋼板を2枚重ねることで、車体に応力がかかった際に鋼板どうしが擦り合います。
このときに発生する摩擦力を利用し、変形を防止するのです。

2枚の鋼板を重ねることで、1枚のときよりも軽くでき、しかも同じ強度を維持できるというメリットがあります。

  • 軽量化が生んだ効果 その1 省エネ
373系のモーター車と付随車の比率は1:2です。
1両のモーター車がどれだけのモーター無し車両を動かすかという数値です。
通常、通勤電車や特急電車では、この比率は1:0.5~1:1.5です。
373系の比率が1:2ということは、1両のモーター車で2両の付随車を動かすということになります。

モーター車両の両数を減らすことができたおかげで、電力使用量が減るという省エネ効果が出ました。

  • 軽量化が生んだ効果 その2 メンテナンスコスト低減
車体を軽量化することで、レールへの負担が軽くなりました。
その結果、保守費用が下がるというメリットです。
軽量化することで、レールの損傷が減り、メンテナンスに掛ける時間を減らすこともできたのです。

  • 軽量化が生んだ効果 その3 加速度向上
車体が軽くなったことで、加速度も向上しました。
373系が運用開始した当時は、従来の電車よりも強い加速度を誇っていました。
モーター出力向上やインバータ制御技術の導入ももちろんですが、軽量化による寄与が大きいことは明らかです。

  • 373系の事例に見る、強度計算に必要なパラメータ
必要な強度を計算するだけでしたら、フレームを太くするとか、フレーム数を増やすということで基準を満たすことができます。
しかしながら、重量というパラメータを入れることにより、単純な強度計算では済まなくなります。
応用技術研究所では、最適化という観点から、アナログとデジタルの双方を駆使して強度計算し、部材設計を行います。


基礎的な手計算というアナログ技術と複雑なシミュレーションを行うデジタル技術を組合せて行うことで、お客様のご要望にお応えしております。

少しでも気になることがあれば、お問い合せフォームよりご連絡ください。

船舶設備の開発・設計

2018/03/10 21:00 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに

商工会の職員の方から紹介され、船舶の設備設計に関わることになりました。
当初は、構造設計のみの話でしたが、結局、駆動系と制御設計も任された仕事になりました。
業務内容の紹介として、船舶設備の開発・設計内容を紹介いたします。
開発プロジェクトの名称は『ピギーバック式旅客船のランプウェイおよびゲートの開発』です。



2. 開発の背景

現在、高速道路網の整備が進み、離島部をつなぐ交通機関の衰退が著しく顕著になってきました。そこで、離島航路の利便性確保と活性化を図るため、バスに乗客が乗ったまま乗船することが可能なピギーバック式旅客船が提案されています。しかし、現在の日本の法律では、バスに乗客がのったまま乗船する船の就航は認められていません。
今回、法律改正を目的とすることから、法律の適用除外となる特例をいただき、ピギーバック式旅客船を建造して社会実験を行なうことになりました。

当社の役割は、提案されているピギーバック式旅客船の設備としてバスが円滑に乗り込むためのランプウェイおよびランプゲートを開発です。


3. 開発の進め方

対象車両は日野自動車様のポンチョで、ハイブリッド仕様車でした。
一方、想定する離島部の交通は軽自動車も想定されるべきでしたので、軽自動車のトレッド(左右車輪館の幅)や最低地上高などを考慮して設備の基本寸法を決めて行きました。
続いて、基本構造を決めるため、車両重量が負荷する位置を変えながら以下のような最大モーメント線図を作成しました。
材料降伏に至る曲げモーメント以下となるように鋼材サイズを選定しました。



最終的に、基本構造を組み合わせ、基本寸法に収まるように設計した設備が以下の図になります。


設計には三次元CADを用いました。
三次元CADを使う理由は、組立作業時の問題点をデータ作成時に発見するためです。特に、ピンなどを挿入するときに必要な逃がし用の空間や、溶接作業に必要な空間の検討などに使いました。

一般的に言われている、『図面のわかりやすさ』ではなく、『製造時におけるやり直し作業をデータの時点でゼロにする』ための作業が中心になります。そのため、設計作業は、コンピュータ内でのデータの組立作業となり、その時点で手間がかかる作業は実際の現場でも苦労するところになります。おかげさまで、製造時点でのやり直し作業はゼロ。現場の担当者様からは、『図面通りにできて楽だったよ』とお褒めの言葉をいただきました。

なお、ここでは三次元CADの画面画像を掲載しておりますが、実際には各部品を二次元の部品図に展開し紙に印刷しております。このような設備の場合、二次元CADの図面を見ないと部品製作ができません。これは三次元CADのメリットが少ない事例です。



4. 制御系の設計

お話をいただいた当初は、橋梁部分の構造設計だけでしたが、担当できる技術者が見つからないとのことで、受け持つことになりました。内容としては、車両通過時に作用する重量をもとに油圧シリンダーを選定と船舶とリンク結合する位置などを設計しました。


5. 製造

以下の写真のように、製造を行ないました。
こちらは、協力していただいた製缶メーカーでの様子です。当初は、別の溶接屋さんにお願いしていたのですが、途中で手を挙げてしまい、困っていたところ協力してくださいました。
当初は、かなり狭いところでしたので、分割して製作し現地で組み立てることを考えておりました。
こちらのメーカーでは、かなり広く場所を確保できることから、一体モノで製作できるように設計を変更しました。

当社は、製作メーカーの得意な部分を活かす設計を心がけております。
製作メーカーが3回にわたり変わってしまったので、それに合わせて設計変更を行ないました。




6. お問い合わせ先

製品開発や設備設計でお困りでしたら、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。


株式会社 応用技術研究所 (刃金からくり屋)
代表取締役 日名地輝彦(ひなぢ てるひこ) 技術士(機械)

太陽光パネルに関する強度計算

2018/03/10 20:02 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに

太陽光パネルを使った商品を企画している中小企業の社長様から、『試作品は作れたが、商品としての強度が計算できず販売に踏み込めない。』との相談を受けました。
また、別の小規模事業者の事業主様から、『太陽光パネルの取付金具の板厚が薄いけど大丈夫かな?』との相談も受けたことがあります。
どのような規準や規格を満足させれば、大丈夫なのでしょうか?


2. JIS C 8955:2011(太陽電池アレイ用支持物設計標準)

太陽光パネルに関する強度計算はJIS C 8955:2011 (太陽電池アレイ用支持物設計標準)に基づいて行ないます。
このJIS C 8955:2011は建築基準法施行令と国土交通省(旧建設省)の関連告示(第1454号、第1458号など)から成り立っていることをご存じですか?
また、この規格は強度計算に必要な諸条件について説明しており、強度計算の方法については説明しておりません。
そのため、強度検討に必要な条件は求めることが出来ても、そこから先の強度計算が出来ず、多くの事業主様や担当者様が困っていらっしゃいます。
弊社にも専門家派遣制度などを通じて相談を受けています。


3. 強度計算ツールがあれば大丈夫なの?

3次元CADに付属の高額な強度シミュレーションソフトや低価格のフレーム用強度計算ツールなど、使える強度計算ツールは幅広くあります。
強度計算の専門家であれば、規格を元に得られた検討条件から強度計算ツールを使って、結果を出すことは出来ます。

しかし、普段の業務では使用されない事業主様や担当者様が、それらのツールを使って結果を出すためにはツールの習熟から始まります。
結果を得るために多大な時間を費やすことになります。そのため、販売の否を判断するための敷居が、非常に高くなってしまいます。


4. 知りたいことは強度面の安心

弊社では、ご相談内容に応じて、結果をご提供いたします。
一例ですが、ある事業主様のから『設計変更に併せて自社で検討できるようにしたい。』とのご要望をいただきました。
そこで、計算内容をEXCELでパッケージ化し、以下の入力帳票の他に計算結果や諸条件の算出表を帳票にまとめ、ご提供させていただいたところ、大変よろこんでいただきました。
法令で認められた範囲内の検討しかできませんが、当社に相談してみませんか?


なお、法令遵守の観点から、ご相談内容によっては一級建築士へのご相談をお願いします。

5. お問い合わせ先
どのようなことでも構いません。
お気軽に、お問い合せフォームよりお問い合わせください。


株式会社 応用技術研究所 (刃金からくり屋)
代表取締役 日名地輝彦(ひなぢ てるひこ) 技術士(機械)

溶接部破断の原因検討と対策

2018/03/10 3:41 に Teruhiko Hinaji が投稿   [ 2018/03/10 3:54 に更新しました ]

1. はじめに

工場内で製品の搬送に使用しているコンテナーが納品して6カ月で破損してしまう事象が発生しました。具体的な状況は以下に示されるような写真のとおりですが、車輪取付ブラケットの溶接部分が破断してしまうというものでした。


この製品を納品した社長から相談された内容は、以下の通りです。

『納品先から対策案を要求されている。修理内容の根拠を示さないと修理は認めないと言われてしまった。
具体的には、溶接部分の強度計算をして、修理内容が十分な強度が確保できていることを説明しなきゃならん。
溶接強度を計算して提出して欲しいと言われても、今まで経験で仕事してきたから困っている。』

こんな相談を受けて溶接部の強度計算書を作成し、納品先の承認を得て、修理することができました。
以下に、強度計算書の内容を説明いたします


2. 溶接部破断の原因

車輪が支えるコンテナー全体の重量(反力)と溶接部に作用するせん断力がモーメントで釣合っているため、モーメントの中心を以下に示される車輪の配置や溶接長から計算しました。


また、車輪は固定輪と自在輪の二種類が取り付けられていたため、以下の三つの場合について、それぞれ、モーメントの釣合いから破断した溶接部分のせん断応力を計算いたしました。
  1. 固定輪
  2. 自在輪(コンテナーの外側を向いている場合)
  3. 自在輪(コンテナーの内側を向いている場合)
機密保護の観点から破断部分のせん断荷重を示すことはできませんが、自在輪の位置により溶接部に作用するモーメント
が変化します。そのため、自在輪の位置により、破断した溶接部に作用するせん断力は最大1.5 kN(約150 kg)程度の変化が生じることがわかりました。
破断の原因は、このせん断力の変化による疲労です。
また、想定される使用条件をS-N疲労線図に当てはめてみると、6カ月程度で破断することもわかりました。



3. 検討に用いた強度規準

多くの場合、強度計算書を作成すると、かならず質問されることがあります。

『強度判定の根拠は、どのようなものですか?
御社で測定した結果を元に判定されているのですか?
法的な根拠を示していただけませんか?』

弊社では、建築基準法施行令 第90条 第一項(許容応力度)、第96条(材料強度)、および平成12年建設省告示第2464号を強度判定の根拠としております。

この場合も、同じような質問が社長の方に投げかけられたそうですが、建築基準法施行令の強度判定に基づいていると回答して納得していただいたようです。
JIS規格では材料の規格として降伏点の条件が示されておりますが、それは材料としての条件です。
静的、動的や引張、圧縮、せん断などの負荷状況による強度要件とは異なりますので、素直に利用することできません。


4. 対策について

以上の強度検討結果を元に、以下のようなL字形のブラケットと溶接位置を設計しました。
また、対策後の強度計算結果もまとめ、問題がないことを説明し修理を行なうことができました。



破断原因を検討する場合、破断面をマイクロスコープなどで観察することも必要です。
疲労破壊の場合、特徴的な破断面が観察されるからです。
今回は、写真と溶接位置を示す簡単なポンチ絵しか提供されなかったため、無理のない範囲で前提条件を設け、計算のみで破断原因の検討を行いました。


5. お問い合わせ先

同じように、破断部の強度検討でお困りでしたら、お問い合せフォームよりお気軽にお問い合わせください。

株式会社 応用技術研究所 (刃金からくり屋)
代表取締役 日名地輝彦(ひなぢ てるひこ) 技術士(機械)

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