営業日誌(ブログ)


メタルジュエリー(Metal Jewelry)の開発 (商品化への道のり その3)

2017/08/29 3:09 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. 熱による青熱脆性(せいねつぜいせい)

『チタンの陽極酸化処理のように美しく。』 とはいきませんが、
炭素鋼(SC材)やステンレス鋼(SUS材)でも美しい青を発色させることは出来ます。

鉄は切削条件により、切削加工時に発色した切粉が排出されます。
これは切粉に生成される酸化被膜によって発色するものであり、テンパリングカラーと呼ばれています。発色する色は様々で、切削時の刃先温度により酸化被膜の厚さが変化するため、発色する色も変化します。

この青色は青熱脆性(せいねつぜいせい)と呼ばれまずか、発色が確認されると材料強度の上昇と延性が低下するため、切削条件の見直しをはかる目安となっています。
このようなネガティブなイメージが先に立つため、このような現象を金属加工品の加飾に使うアイデアは、これまで出てくることは少なかったです。

今回、このテンパリングカラーを利用して宝石のカットを施した金属片を発色させ、メタルジュエリーを開発しようと思い付き、これまで経過について書いて来ました。


2. 金属片の設計と完成イメージ

青色だったので、

『金属がブルーサファイアのようになると面白そうだな。』

と考え、3次元CADを使ってサファイアカットの部品を設計しました。(右図を参照願います。)

あとは、市販のネクタイピンに飾りつけるだけで、商品イメージを掴むことができます。


これまで、その1で書いた通り、有限会社鈴精機(静岡県周智郡森町)様に加工をお願いし、サファイアカットの部品形状を加工して頂きました。



加工した部品を組み合せたネクタイピン

3. 熱処理による金属部品の加飾

今回、株式会社 中遠熱処理技研(静岡県掛川市)に相談し、ステンレスと炭素鋼の加飾について試作をお願いいたしました。

お話を伺っていると、いろいろと熱処理の可能性を試されており、工業的には利用されないようなことについても知見をお持ちでした。
それらの幅広い知見のなかから、当社の相談内容に合致する、様々なご提案を頂きました。

可能な範囲のなかで加飾の取く組みをお願いし、以下に示される写真の結果を頂きました。

熱処理条件については公開を控えさせていただきますが、鮮やかなテンパリングカラーが発色しております。
そこで、この青色を遠州碧(えんしゅうブルー)と呼ぶことにしました。
それは、静岡県西部を遠州と呼び、この遠州地方にある中小企業の技術力を結集して製作し、得られた青だからです。


遠州碧(えんしゅうブルー)に発色するメタルジュエリー


4. 三次元CADの完成イメージについて

図面の完成イメージ図を見て、この発色に近づけていただいたようです。
試作品の数も限られている中で、このような結果を出していただいたことに感謝しております。

余談になりますが、三次元CADによる効果は、二次元図面に完成イメージ図など立体的な画像を添付できることにあると思います。
三次元CADで立体的なデータを作成するだけでなく、このような活用もあるのかな、と思います。


5. お問い合わせ

開発中の試作品や、このような取り組みに興味や関心をお持ちでしたら、お問い合わせフォームからご連絡下さい。よろしくお願いいたします。

メタルジュエリー(Metal Jewelry)の開発 (商品化への道のり その2)

2017/08/09 18:57 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. 試作品販売を通じた市場調査

以下の展示会で試作品の販売を行い、市場の反応や評価、希望や要望などを集めてみました。
その結果、企業の創立記念日や結婚記念日などをマーキングした記念品や個人のイニシャルやロゴマークを彫刻するなどのお話を伺いました。
貴重な話をお聴かせいただいた皆様に感謝致します。

展示会 『ビジネスマッチングフェア 2017 in Hamamatsu』

開催期間
平成29年7月19日(水) 10:00~17:00
平成29年7月20日(木) 10:00~16:00

会場
アクトシティ浜松 展示イベントホール
(静岡県浜松市中区中央3-12-1)

販売したメタルジュエリーの試作品


お客様の声を聴いていると、『自分だけのオリジナリティを追求したい。』という気持ちが伝わって来ました。

開発当初、製品ごとに文字や記念日を彫り込んで個性を出すことは考えていませんでしたが、お客様の声を耳にし、販売時の製品オプションとして検討してみました。


2. オプションの開発(文字のマーキング)

文字やロゴマークを施工する方法としてレーザーマーキング加工と切削加工の両方で検討したところ、以下のような点からレーザーマーキング加工によるオプション・サービスを検討することにしました。
  • アルファベットや数字なら 2mm×2mm の範囲で文字をマーキングできる
  • 加工コストを抑えられる
製作時に文字などを彫り込むことも検討しましたが、1個だけの特別加工となり製造コストがかかるため、
オプション・サービスから外すことにしました。


3. マーキングする文字データの作成

今回、当社が出展する展示会でお会いすることが多い 有限会社 岩倉溶接工業所 様に、マーキング加工の試作をお願いいたしました。

右図に示されるようなマーキングする文字データ(DXFデータ)を三次元CADを使って作成し、マーキング加工をお願いいたしました。当たり前のことですが、マーキング加工の指示図も作成してお渡ししております。

4. マーキング加工の試作

以下の写真は、完成したマーキング加工の試作品になります。
指示図面で指示した通りの出来上がりとなりました。
側面にマーキングすることも可能とのことでしたので、記念日などは目立たないようにすることもできます。

マーキング加工の試作品


現在、試作品を胸ポケットに装着し、お会いする方々にお見せして意見を伺っております。


5. 今後について

マーキング加工のオプションにより、製品の幅を拡げることができました。
ご意見や希望をお話くださいましたお客様の皆さまに、改めて感謝を申し上げます。

現在、熱処理によるブルーリング処理について開発を進めております。
試作結果について、またご報告させていただきたいと思います。

本試作品につきましては、以下の展示会で参考出品いたします。
ご興味がございましたら、ご足労をおかけいたしますが、会場まで足をお運び下さい。
よろしくお願いいたします。

展示会 『第7回 産業振興フェア in いわた』

開催期間
平成29年9月29日(金) 9:00~17:00
平成29年9月30日(土) 9:30~15:00

会場
アミューズ豊田 (静岡県磐田市上新屋304 駐車場あり)

上新屋304




6. お問い合わせ

このような取り組みに興味や関心をお持ちでしたら、お問い合わせフォームからご連絡下さい。
よろしくお願いいたします。

メタルジュエリー(Metal Jewelry)の開発 (商品化への道のり その1)

2017/06/30 2:28 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. メタルジュエリー(Metal Jewelry)開発のはじまり

金属を300℃から450℃の間で炙ると、焼色が付きます。
焼色を利用した身近な事例として、オートバイのマフラーが挙げられます。マフラーには排気ガスによる耐食性と軽さが求められるため、車両のグレードによりチタンが使われることがあります。
このチタンの焼色は抜けるような青色になるので、マフラーの加飾として利用されています。

他に知られている金属だと、ステンレスだとアンバー(飴色)、炭素鋼だと藍色になります。

一方、この現象は知られており、特別なことではありません。
製品により、加工中に焼色が付くと商品性が落ちるため、嫌われることもあります。

展示会に出展しながら、今後のビジネスのヒントになる情報を求め、いろいろな出展者のブースを見学させて頂きます。その中で、ある出展社と話をしていて、

『このような現象を利用した商品ができないか?』

というような話となり、焼色の利用をテーマに金属を宝石のように見せるメタルジュエリーを開発することにしました。


2. メタルジュエリーの設計と製作

設計をするにあたり、ジュエリーのカットについて調べてみると明確な規格がないことを知りました。
分かったことは、高さや幅に対する比率で形状が決まっているようです。

そのため、最初のメタルジュエリーは比較的モデリングの難易度が低いサファイアカットにしました。
加工については、有限会社鈴精機(静岡県周智郡森町)に相談し、形状を損なわず加工できるアイデアを頂き、3Dデータをお渡ししてメタルジュエリーの製作をお願いいたしました。


3. 金属の焼色は必要か?

製作されたサファイアカットの部品を見たとき、以下のような印象を持ちました。

このままでも、商品になる!』

試作品としてネクタイピンのトップに取付けて見ました。以下に試作品の写真を掲載します。



写真を見ますと、サファイアカットのエッジのピントがボケているようにも見えます。
これはエッジ部分が三つの面で構成されていて、微妙に光の反射が変化するためです。

メタルジュエリー(Metal Jewelry)の開発を先に進める前に、この状態で市場に提案してみることにしました。
刃金からくり屋として、市場の汎用や評価、希望や要望などを集め、商品性を高めようと考えました。

4. メタルジュエリー(Metal Jewelry)の試作品販売について

以下の展示会で試作品(販売個数 30ケ)の販売を行います。

開催期間
平成29年7月19日(水) 10:00~17:00
平成29年7月20日(木) 10:00~16:00

会場
アクトシティ浜松 展示イベントホール
(静岡県浜松市中区中央3-12-1)

販売価格  8,000円(税込)


ブース番号は『A-10』 で、以下のポスターパネルがブース内に掲示してあります。
このパネルを目印にお越し下さい。

なお、製作にご協力いただいた有限会社 鈴精機様もブース番号『A-4』で出展しております。
こちらのブースへもお立ち寄り下さい。



5. お問い合わせ

このような取り組みに興味や関心をお持ちでしたら、お問い合わせフォームからご連絡下さい。
よろしくお願いいたします。

三次元(3D)CAD導入のヒント

2017/06/06 19:45 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに


当社では、ローエンドの三次元(3D)CADを使い製品や設備設計を行っております。
また、自動車部品メーカー勤務時には、ハイエンドの三次元CADを利用しておりました。

それらの経験を踏まえ、3D-CAD導入のヒントを説明いたします。



2. 三次元CAD導入の効果



2.1  設計工数は減らせる?


設計工数は減りません。


理由は、二次元CADでの作図に対し、次の作業が増えるからです。


1) 部品の三次元形状をモデリング作業

2) モデリングした部品データを組立図として組み立てる作業


特に、3D-CAD内における部品データの組立作業は、構造の複雑さや部品点数に比例して時間を費やす作業になります。


一方、部品加工の指示は紙図面で行います。

I-PADのような携帯端末で三次元データを見て、部品の曲げや溶接加工を行える事業者の存在を聞きません。さらに3D単独図(1)についても標準化の動きはありますが、ISOJIS規格化には、まだまだ時間がかかるようです。


したがって、3次元データだけで部品製作ができない現状では、三次元CADを導入しても設計工数は減りません。



2.2  製作コストを減らします


三次元CADにより製作コストは減らせます。


一般的に言われているように三次元CADの場合、部品間の干渉が発見しやすいので、製作時に発生する不具合は少なくなります。

また取付け位置の周辺形状をモデル化し部品モデルと組み合せることで、取付け時の干渉も確認できます。

さらに、3D-CADで組立作業のシミュレーションを行うと、作業時に干渉する部分を発見でき、製作前に部品形状を改善することができます。


2.3  シミュレーションはケース・バイ・ケース


三次元CAD導入のメリットにシミュレーションを挙げられます。

しかし、時間ばかり取られ業務効率を悪化させる場合が多く見られます。


特に単純形状で検討可能な場合、EXCELのようなツールを利用した方が効果も高くなります。

また、シミュレーションは難解な専門用語も多く、単純な形状モデルを元に計算結果の精度確認も必要となり、すぐに使いこなせる機能ではありません。


導入検討時には、専門家の方にご相談ください。



3.     三次元CAD導入で設計者に求められる能力とは


製作工数を削減するポイントは設計時における組立作業のシミュレーションにあります。三次元CADは三次元形状のモデルを使うため、組立作業時に部品を逃がすために必要な空間の検討が容易になります。


設計者には、モデリングや作図能力以外に、3D-CADのメリットを活かした組立作業の検討能力が求められます。また、デザイン・レビューを頻繁に行い、製作する担当者の意見を求めることも有効です。



4. ローエンドの3D-CADについて


設計内容に応じて、ローエンドの選択も有効な場合があります。


ミッドレンジの三次元CADと比較した場合、曲面の作成機能や作図機能に制限があり苦労することもありますが、設計ツールとしては十分に機能しております。

お悩みの際は、専門家の意見を伺ってみてはいかがでしょうか。


当社では、ローエンドの三次元CADを利用しております。
意匠面などの編集は曲面に強い三次元CADを使っており、用途に応じて複数の三次元CADを使用しております。



5. おわりに


2003年のWindowsXP以降、三次元CADに大きな変化はありません。それゆえ、10年近い開発設計業務からの実績は、これから三次元CAD導入するヒントとして十分に役立つものと思われます。


ご意見やご質問をぜひお聞かせください。



3D単独図(1)

三次元形状の投影面に形状寸法や幾何公差などの設計情報を付加し2D-CADで作図する図面情報を集約した三次元データのことを意味します。

MakerBot®製 3Dプリンター用 代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)製作

2017/05/27 1:25 に Teruhiko Hinaji が投稿   [ 2017/05/27 19:16 に更新しました ]

1. はじめに

MakerBot純正フィラメントの標準価格は、ボビン1巻(約900 g)で10,000~13,800円(税別)ぐらいです。

当店では図面の形状確認に3Dプリンターを利用しております。
そのため設計コスト削減の観点から、純正品と代替可能で廉価なフィラメントに強い関心を持ってしまいます。実際に販売されている純正品の代替フィラメントは、ボビン1巻(約1 kg)で6,500円(税別)ぐらいになります。

グラム単価で言えば、純正品1グラム約15円の材料費が代替フィラメントに変えると約6円50銭になり、50%以上のコスト削減になります。そのためコスト削減効果を目的に代替フィラメントを購入してみました。

納品されたフィラメントを見るとボビンの形が異なり、プリンターに取り付けられないことが分かりました。そこで、代替フィラメントを取り付けるホルダー(ボビン取付台)を製作しました。


2. 代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)の設計


『どのような材料を使い代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)を製作するか?』

最初に考えたことは、材料の選択でした。
『共通の悩みを持つユーザーなら、図面を公開すれば自分の責任で自作するだろう。』と考えたからです。

そのため基本は量販店で容易に入手できる材料を考えました。
木材、コンパネ(べニア板)、水道用の塩ビパイプなど、いろいろ材料が考えられます。

使用する材料を想定しながら加工や組立方法、必要な道具などを試案することを繰り返し、量産組立工場などで使われている矢崎化工(株)イレクターを使うことにしました。どの量販店でも取扱いがありますし、インターネット上にある複数の通販サイトから入手も可能です。

次にボビンの実寸法から以下のような取付台を考えました。
設計の狙いとしては、造形時のフィラメント供給が円滑に行われることです。

一方、インターネット上に公開されている写真などを拝見するとベアリングなどが使用されているものがあります。しかし、量販店で入手可能なベアリングは限られています。そのため、フィラメントの取付けはシンプルな構造にしました。

各パーツの寸法については、ボビンが床面と擦らないことを条件に脚の長さを決めました。
その他のパーツについては、フィラメント供給時に干渉しないような寸法にしました。

こんな条件から三次元CAD上で試行錯誤し下図のようなホルダー(ボビン取付台)に設計をまとめました。


設計した代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)


3. 代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)の製作

製作過程については、定尺で販売されているパイプを購入し、部品の切り出しから始まります。
450mmの定尺パイプ2本用意し、下図のように部品を切り出します。


イレクターパイプ(Φ28) 切断加工図

パイプの切り出しが完了したら、以下の製作図のように部品を仮組みし、接着する状態を確認します。固定に使用する接着剤は樹脂部分を溶かすため、固着後の剥離が出来ません。

《重要》
接着する前に、必ず仮組みし、その状態で接着剤を塗布するか、接着の段取りを見極めてから接着作業を行ってください。


代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)の組立図



4. 完成した代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)

完成した代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)の様子を以下に示します。
以下の写真のような状態で、造形出来ることを確認しました。
ただし、供給時にエクストルーダの位置によってはフィラメントの供給が円滑に出来ない部分もありました。
現在は、プリンターに取り付けられているフッ素系チューブを介してエクストルーダーに供給するようにしています。


完成した代替フィラメント・ホルダー(ボビン取付台)



5. 3Dプリンターによる造形で知って欲しい材旅費のこと

この記事を書いている時点(2017年5月27日)の豚肉こまぎれ(国産)が100グラム約110円です。
またステンレス鋼材 SUS304 (18-8) 2mm の場合、100グラム約32円です。 
一方、純正品のフィラメントだと100グラム約1,500円、代替フィラメントでも約650円となり、意外に材料費は高額であることが分かります。

三次元CADのデータから容易に形状が造形できるので注目度も高かったのですか、やはり原価の一部となる材料費が高いです。
そのため、コスト削減手法としては認知されなくなりました。

フィラメントの販売価格が安くなることを希望しますが、フィラメントの価格が話題になることは少なく、低価格化については期待できません。
むしろ造形品を利用した、多様な製品製作手法の開発が必要だと思います。



6. さいごに

今回は、部品加工図と組立図を公開いたしました。

なお、部品加工や製作組立時におけるケガなどについては、必要に応じて防護具などを付けて作業を行ってください。
また、公開した情報の利用については、ご自身の責任と判断でご利用下さい。利用した結果について、当社として責任は負えません。



7. お問合せについて

個々の部品図が必要な場合、お問合せのページからご連絡いただければと思います。

また、以下のようなご要望にもお応えいたします。
こちらも、お問合せのページからご連絡下さい。

お問合せ内容を確認後、見積書と販売条件の説明書をお送りさせていただきます。
ご納得頂いた上で、代金支払いをもって注文とさせていただきます。


『部品を切り出す道具がないので、カットした部品が欲しい。』
『完成したホルダー(ボビン取付台)が欲しい。』
『組立図の寸法だと、購入したボビンが使えないので、改造してほしい。ついでに製作もお願いしたい。』


なお、代替フィラメントについて、当店では扱っておりません。
ご了承願います。

技術者が独立するために必要なこと

2017/04/20 1:22 に Teruhiko Hinaji が投稿   [ 2017/04/20 1:23 に更新しました ]

1. はじめに

『フリーランスのエンジニアになりたい。』あるいは、『憧れている。』
そんな方は多いのかもしれません。
一方で、勤務先の評価が低く見えてしまい独立を考える方もおられると思います。

技術士の資格取得を機に、私自身はフリーランスとして独立いたしました。
その後、経費管理を厳密にしようと思い、個人事業を法人化しました。

独立して3年。 法人になって2年が経過しました。
これまで体験してきたことを、将来を考えて独立を考えているエンジニアの皆さんの参考になればと思い、体験の一部をご紹介いたします。


2. 技術士資格の取得について

技術士資格を取得しようとした動機は、以下のような甘い見通しからでした。

『技術士会や所属する会員から仕事が融通してもらえるかも。』

技術士会は人的ネットワークを形成することを主な目的としている場です。
そのため業務受託に関しては開拓途上にあり、現在でも融通していただけるような状況ではありません。
また『技術士』の管掌官庁は文部科学省であり、産業界との接点も薄いため、資格に対する知名度は低いです。そのため技術士を名乗っても、収入につながる仕事はありませんでした。

一方、企業で求められるものとしては開発管理や開発企画であり、関連する従業員が必要な管理ツールを使えるようになることです。
専門的な技術に対する指導について問合せを受けることはありませんでした。
また、補助金申請のお手伝いで中小企業診断士の方々と組むことが多いです。

資格取得のメリットとしては、技術者としての能力が技術士法により担保されることでしょうか。特定の独占業務があるわけでもないので、メリットは多くありません。


3、 経費の管理

仕事を受託すると、経費が発生します。
最初のうちは『領収証を集めて整理しておけば良いのかな?』と考えていました。
実は2年ほど前から確定申告の色(白色か青色)に関係なく現金出納帳の記載が義務化されています。個人事業者として独立したときに青色申告会で記帳の仕方(簿記)を勉強しました。法人化してからは記帳はすべて自分で行い、月度と期末の決算は税理士の先生にお願いしております。
これから独立を考えている方は、簿記3級程度の知識と実務能力を身につけておかれたほうが良いと思います。
便利な記帳ソフトもありますが、簿記実務に関する知識がないと正確なデータ入力ができず、確定申告時に困ってしまいます。


4. 自己資金

仕事の見通しがあって独立した場合、売上の目処も予測できます。
私の場合、サラリーマンを辞めた日に、当てにしていた仕事が流れてしまいました。
その後、開発の仕事が入り、お客様に7カ月の間、拘束され仕様確定作業をしており、他の仕事を入れられませんでした。
残念ながら、その間は無収入で貯金の大半を崩しました。



また、法人化してからは、期末決算時に収入と経費支出がほぼ等しくなりました。
しかし、次の売上まで現金が手元になく、法人市民税や税理士への決算報酬の支払いに苦労しました。
そんな反省を踏まえ、独立をする場合の自己資金は1年間、無収入でも生活できる貯金は必要だと思います。

経費支出の具体的な内訳を挙げていくと、以下のようなものがあります。
目安として500万円の自己資金は準備しておいた方が良いと思います。
  • 仕事を得るためには営業経費
  • 県民市民税
  • 年金保険、健康保険などの社会保障費用
  • 日々の生活費 (家庭での家事費や水道光熱費、通信費など)
自己資金については慎重に見積り、ご自身でご判断下さい。


5. まとめ

今回、大事な点として以下のようなことを説明いたしました。
  • 技術士の資格だけでは、仕事は得られません。
  • 経費を税務書類として記帳管理する簿記3級程度の能力
  • 仕事が入らなくても事業を継続し、生活が維持できる自己資金

6. エンジニアが独立するために必要なこと

最後に、エンジニアが独立するために必要な要素を考えてみました。

大学の工学部や工業高専を修了した学生や、工業高校を卒業した生徒の多くは、就職した企業で事業維持・拡大に必要な技術開発を任されることになります。

この技術開発に必要な開発費用や日々の生活費は、事業者が事業経費や従業員給与として用意します。またエンジニアとして成長に必要な経験は、日々の研究開発業務から得られます。必要に応じて、教育の機会も与えられます。

これらの要素を自力で用意できるようでしたら、エンジニアとして独立しても大丈夫だと思います。

企業の中にいると当たり前になってしまい忘れてしまいがちですが、エンジニアとしての能力は、お勤めの企業が投資して用意した環境と構築してきたビジネスモデルの中ではぐくまれるものです。
エンジニア個人の能力が優れているからではありません。

独立をお考えのエンジニアの皆さん。
残念ながら、当社も成長途中なので独立のお手伝いはできません。

しかし、お悩みを共有することはできます。
こちらのお問い合わせフォームよりご連絡下さい。




三次元CADの選択 (支援機関、経営指導の皆様へ)

2017/04/09 8:25 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに 

経営者の方々から三次元CADの導入について相談を受けます。
どんな相談が多いと思われますか?

導入費用でしょうか?
それとも、年間のライセンス料でしょうか?
導入後の社員教育でしょうか?

実は三次元CADが、会社の身の丈に合っているかなんです。


実際にお話の中で伺う質問は、こんな感じです。 

『支援機関やコンサルタントから三次元CADを進められるけど、本当を入れた方がいいのかな? 事業内容から考えても二次元CADで充分な気がするけど…。 』

導入費用や導入後の社員教育は、事業計画を達成するために検討されるものであって、あまり課題として考えている経営者はいません。

そこで、これまでの相談内容をもとに、三次元CADの選択について基本的な考え方をまとめてみました。


2. 三次元CADで何するの?

最初に聞くことは、会社の事業内容や解決したい経営課題や問題点です。
いきなり三次元CADの話はしません。 
話を聞きながら、次のようなことを考えます。

自分が技術系の担当だったら、
どんなツールを選ぶだろうか? 

念のために、以下のようなことを確認します。
  • 部品形状を三次元CADでモデリングしなければダメなの ?
    二次元の平面図のDXFデータだけではダメなの ?
  • 事業の拡大は、生産量の拡大 ? それとも、品種の拡大 ?
  • 取引先から送られてくる図面は三次元データ ?
    それとも三面図に展開した形状寸法図 ?
などについても、当社の社内システム図などをお見せしながら確認します。
刃金からくり屋の道具 (CAD/CAM/CAEなどによる製品開発環境)


ここまで伺った内容から、三次元CADの導入について判断します。
このような相談を受ける場合、ほとんどの経営者の皆さんは答えを持っています。

『三次元CADで仕事をしている専門家のあなたから見て、
この事業の推進に三次元CADは必要ないよね?』

つまり、三次元CADは身の丈に合っていないことは理解しておられます。

実は相談と言いながら、コーディネータや経営指導して下さる先生に対し、相談者に代わり三次元CADが不要であることを説明することが仕事になります。

3. 三次元CAD導入に熱心なのは…

実は三次元CAD導入に一生懸命なのは、支援機関のコーディネータの皆さんだったり、経営指導をお願いしている先生だったりします。

三次元CADを薦める理由として、以下のように考えておられるようです。
  • 『三次元CAD』の方が機能が豊富であり、ソフトウエアの能力に合わせて社員教育も進めば事業拡大も楽にできる。
  • 今の経営課題は『二次元CAD』でも解決できるかもしれない。
    でも、この先『三次元CAD』が必要になるかもしれない。
相談者へ『二次元CADで十分です。』と、最終的な回答をお伝えしているとき、このような理由でアドバイザーとして同席されている先生方が割って入ってこられます。

相談者は納得しておられるのですが、コーディネータや経営指導をなさる先生方が様々な疑問をぶつけてこられます。

先生方の質問にお答えした後、
将来も含めた業務内容で利用する三次元CAD機能が、すべての機能を10とした場合、どの程度なのかをその場で見積ります。
利用する機能が7~8割を超える場合には『三次元CAD』を導入を促しますが、5割を下回るような場合には利用者の経費負担が大きくなるため再考を促します。


4. CADデータ保存のクラウド利用

最近のデータ通信環境は非常によくなりました。
SIMフリーのタブレットPCやAndroid PCなどを使えば、どこにいてもインターネットに接続することができます。

一方、製品の寸法形状や加工方法を明示するCADデータは、自然災害によるデータ消失や人為的なデータ漏洩などのリスク回避を考えながら一元管理することが求めらています。

そこで当社ではマイクロソフト(株)のクラウドサービスを利用し、CADデータをクラウド上に保存し、経費負担を抑えながらリスク回避をはかっています。

設計データのクラウド保存とモバイル利用


4. おわりに

三次元CADはコンピュータの中に三次元形状のデータを作成する道具です。
形状が複雑で
複合加工機などで加工するためCAMデータが必要となる場合、導入した方が効果が高いです。

一方、ワイヤーカットや平面的な単純加工で製作できるような製品の場合、2次元CADでも効果があります。
また、三次元CADが二次元CADの機能を兼ねることはありません。
三次元CADの製図機能は、モデリングした三次元データを投影図として展開しているだけであり、二次元CADほど製図機能が充実しているわけではありません。

したがって、大は小を兼ねません。

 CADの導入にお困りの場合、『お問い合わせ』を通じてご連絡下さい。

豊田佐吉翁 生誕150周年記念グッズ製作

2017/03/12 1:14 に Teruhiko Hinaji が投稿

1. はじめに

 平成29年2月11日に行われた『豊田佐吉翁 生誕150周年記念式典』、無事に終了いたしました。

 当社は湖西市の
豊田佐吉翁生誕150年記念事業(事業期間 : 平成28年2月15日~平成29年2月14日
)に参加いたしました。本事業期間中、豊田佐吉翁の功績や志に触れ、ご協力いただきました皆様に感謝いたします。

 今回は、本事業を振り返って、思うところをまとめてみました。


2. 事業参加の動機

 本事業に参加しようと考えた動機は、右図のピンバッチでした。このピンパッチ、『Made in China』と印刷された透明ポリ袋で包装されていました。
 ひ孫にあたるトヨタ自動車の豊田章男社長は、円高が進み海外生産が進む2010年末の記者会見で「円高など不利な面もあり、日本でものづくりを続け一企業として耐えることは理屈では限界を超えている。だが、日本を代表する企業として日本からものづくりをなくしてはいけないという使命感を持っている」とお話された方です。

 そんな記者会見の様子を思い出しながら、地元や国内の事業者の力が及ばずコスト優先で中国で製作されたことに口惜しさが生じ、事業に参加することにしました。

3. 事業に申請するための企画書作成

 事業内容を調べていくと冠事業(平成29年2月14日をもって終了)が募集されていました。冠事業の対象事業と事業に対する基本方針は以下の内容になります。
  • 対象事業
    • 従来から実施している事業、若しくは豊田佐吉翁生誕150年の記念事業として新たに実施する事業で、「豊田佐吉翁生誕150年記念事業基本方針」の趣旨に調和し、記念事業としてふさわしいもの。
    • 平成29年2月14日までに実施されるもの。

  • 豊田佐吉翁生誕150年記念事業基本方針
    • 技術立国発祥地にふさわしい事業
    • 全国に湖西市の名を知らしめる事業
    • 佐吉翁の精神に学ぶ、人材育成に関する事業
 しかし事業に応募しても行政機関からの補助はありませんし、個人の志だけでは慈善事業になってしまいます。そこで展示会に出展し、当社の事業内容のPRと併せながら『豊田佐吉翁生誕150年記念』をPRできる企画を考え、申請書類を作成し湖西市様に提出しました。
 

4. 申請した事業内容

以下は、申請書に記載した企画概要です。
名刺と一緒に下記のチラシと3Dプリンターで造形した事業ロゴをチャック付きのポリ袋に入れ、展示会で配付することにしました。

(企画概要)
『当社は、平成26年9月に湖西市で創業した。
 現在は事業拡大を図るため、平成27年6月に現在の所在地(浜松市西区村櫛町)に移転し、三次元CADを用いた機械・設備の設計を主な事業としている。
今回、創業した湖西市への貢献事業として、当社が得意とする三次元CADで豊田佐吉翁生誕150年記念事業のロゴを三次元化して3Dプリンターで造形し配布することを企画した。』


5. 事業の成果

 以下の展示会に出展し、ブース来場者に名刺と造形した記念事業ロゴを配付しました。造形して配付した枚数は約300枚になります。
この事業を行って新規の受注につながることはありませんでしたが、いろいろな方に声をかけていただくことが出来ました。この場を通じて、改めて感謝いたします。

  • 平成27年度
    • 第11回かわしんビジネス交流会 (平成27年10月23、24日)
    • 第3回こさいNewテクノフェア (平成27年12月4、5日)

  • 平成28年度
    • ものづくり博2016 in 東三河 (平成28年6月17、18日)
    • 第11回しんきんビジネスマッチング
      ビジネスマッチングフェア (平成28年9月21日)
    • 第6回いわた産業振興フェア (平成28年11月11、12日)
    • 第4回こさいNeoテクノフェア (平成28年12月2、3日)

6. 出展時の様子

 豊川信用金庫様が主催した展示会に出展したときの様子です。
この時は豊川市の加工メーカーに誘われて出展いたしました。

第11回かわしんビジネス交流会 (平成27年10月23、24日)


 こちらは『モノづくり博2016 in 東三河』に出展した時の様子です。
この時は、蒲郡市の(株)ジーエム様とそれぞれ1区画ずつブースを購入し、主催者に『事業者連携をアビールしたい』とお願いし、ブースを区切る仕切りを取り除いていただきました。
 おかげさまで、お互いに広くブースを利用することができ、共同出展の成功例として蒲郡商工会議所様からも注目されました。

ものづくり博2016 in 東三河 (平成28年6月17、18日)


7. さいごに

 このように豊田佐吉翁生誕150年記念事業をPRしながら当社の事業をアピールしてまいりました。平成29年2月14日をもって記念事業は終了しましたが、展示会出展を通じて、いろいろな企業様との連携も提案できるようになりました。

 平成29年度は、記念事業による展示会出展を通じて積み上げてきた連携により、企画して開発してきた商品を提案しマーケティングを行う計画です。

 このような事業連携や商品開発に対して、ご興味があれば『お問い合わせ』を通じてご連絡下さい。

からくり道具の紹介

2017/02/02 7:00 に Teruhiko Hinaji が投稿

国内にある多くの支援機関では事業の付加価値を高めるセミナーが開催されます。
セミナーでは独自技術による商品開発を促されデザイナーとのマッチングを勧められます。
一方、自社開発を選択し開発する環境を整えようとした場合、困ることも多いと思います。
今回は『からくり道具の紹介』と題し、当店の商品開発の環境と道具についてご紹介いたします。
1. デザイン・機械設計(3次元CAD)

当店では2つの三次元CADを、開発する商品の加工法や形状などに応じて使い分けています。CAD相互のデータ授受はSTEP形式で行っております。
  • GeomagicDesign
    平面や半径が一定の曲面などで構成された形状部品の設計に利用
    (用度 : 主に汎用フライスや汎用旋盤などで加工される機械部品)


    三次元スキャナーで得られた点群データからCADデータが作成できる
    数少ない三次元CAD
    です。

  • Rhinocerose
    半径が変化する曲面(自由曲面)などで構成された形状部品の設計に利用
    最近は、Grasshopperの利用についても、様々な検討を行っております。
    (用途 : 主に多軸の複合加工機などで加工される意匠部品)

    NURBS曲面の作成を得意とする三次元CADで、多くのデザイナーに支持され利用されています。

2. 社内情報の一元管理

利用していたNASの更新時期に、改めて電子データの保管に関するリスクを洗い直してみました。以下のリスクに対し、費用と労力の負担が少ないクラウドストレージを選択しております
  • 費用リスク
    装置の利用可能期間(寿命)に投資する費用として導入費用と利用期間に要する保守サポート費用を検討しました。具体的には1年当たりの経費を
    出し比較しております。
  • 装置の故障リスク
    装置の故障によって生じる不稼働時間について比較検討を行いました。また、オンサイト修理(部品交換)、引取り修理、買替えなど、故障の程度に応じた電子データへの影響も検討しております。
  • データの消失リスク
    データ消失の原因には前述した装置故障に伴うものと人為的なものがあります。どちらの場合にもバックアップなどで回避できることが多いため、電子データのバックアップ方法に重点を置きました。
  • 災害等によるロケーション・リスク
    バックアップを含むすべてのデータが事業所にまとめて保管されている場合、
    地震や津波などの発生によって、すべてのデータが同時に失われてしまいます。遠隔地へのバックアップ・データ保管などロケーション・リスクを低減を検討しました。

3. 設計検討(シミュレーション)

三次元CADで設計したデータについては、必要に応じて有限要素法(FEMシミュレーション)にLISAを使い強度・剛性検討を行っております。また、制御系(機構や動作)のシミュレーションにMATLAB/SimulinkやSCILAB/XCOSを利用しております。

4. 取引先(仕様情報共有化)

当店の取引先の多くはSOLIDWORKS™ (3次元CAD)を利用しています。
三次元CADデータの授受はSTEP形式やParasolid形式で行っております。
その結果、デザインから設計、部品加工、組立、製品のパッケージ(荷姿)まで三次元CADデータで貫徹しております。


5. 3次元スキャナー

精度が要求されないような部品のデジタル化にMakerbotのDEGITIZERを利用しております。三次元スキャナーで得られた点群データは、GeomagicDesignを使いCADデータを作成しRhinoceroseで意匠面として調整しています。
また精度が必要な部品については、取引先に依頼しております。

なお、2017年1月末時点において、MakerbotのDEGITIZERは製品リストから外されております。


6. デジタル造形

作成した三次元データの成立性確認にMakerbotの3DプリンターやRoland D.G.の卓上モデリング加工機を利用しています。また画面に表示されるデータでは分からない感触や部品の大きさなど感覚的な部分の確認にも使っています。

店内で簡易的な試作を行っているので、初期設計の段階で加工しやすい形状を考えます。そのため、やり直し作業も少なくなり取引先との打合せも円滑に進むことが多いです。


7. アナログ造形

丸モノ部品にも対応できるように、卓上の汎用精密旋盤を使っております。
特に、全日本製造業コマ大戦にもスポットで参戦しており、コマ製作にも利用しております。


8. デジタルエンジニアリング環境

『1人でもできるローコスト・ハイパフォーマンスなデジタルエンジニアリング』を意識し下図に示されるようなデジタルエンジニアリング環境を構築してきました。
冒頭にも書かせていただきましたが、自社開発を始めるときに必要な道具や環境などの参考にしていただければと思います。


9. まとめ

開発環境の構築でお悩みの場合には、ぜひご相談ください。
ご相談いただいた事業者の中には二次元CADでも大丈夫な場合もあり、三次元CADを使わないシステム構成をお伝えしたこともあります。

詳細については、こちらのお問い合わせフォームからご連絡下さい。

からくり仕事 (船舶設備の設計開発 - その2)

2016/09/11 8:19 に Teruhiko Hinaji が投稿   [ 2016/09/11 19:12 に更新しました ]

1. はじめに

前回、基本構造をフレーム構造にするか水密構造にするかの選択について話をしました。

軽量化を図りつつ、今回の負荷条件では有利になるフレーム構造を選択しました。

今回は、マイクロバスをピギ―バック式船舶に誘導するランプ装置の基本寸法の決定と当時の製造計画について書くことにします。


2.  車両仕様の調査

製品開発をやっていれば当たり前の話ですが、最初から具体的な形状寸法は決まっていません。
むしろ開発を請負う側が調査し開発仕様書と共に企画図として図面化を図ることが多いです。

この場合は、国内で製造・販売されているマイクロバスの車両形状について調査しました。
具体的な調査項目は車両の全長、幅、総重量(定員乗車、ガソリン満載時)、最低地上高などです。
そのほかにも、標準装備としてのタイヤの幅やトレッド幅(左右タイヤ接地面の中心間距離)を調べました。

一方、このピギーバック式船舶は離島間の車両輸送を目的としています。
作業用車両として軽自動車はよく使われています。
頂いた話の中に軽自動車の話は含まれていなかったのですが、念のため軽車両についても同様の調査をしました。

【資料公開に伴う注意】
以下に示す調査結果は、2013年10月当時に各自動車メーカーのホームページで公開されていた寸法です。現在は設計変更や製造完了に伴い該当する車両や寸法が異なることがあります。
利用する場合には、改めて各メーカーのサイトを確認すると同時に、利用に伴って生じた全てのトラブルについて、当店では責任を負いかねます。ご了承下さい。






















3. 作成した企画図

調査結果からランプ装置の基本寸法をまとめ、下図のように企画図を作成しました。
この時点で昇降装置は考えていません。
油圧装置の得意な事業者と連携して設計することになっており、企画図には含まれていません。


また、ランプ装置上を走行するマイクロバスの走行軌跡などから、桁材(長手方向に配置する部材)の配置を考えました。
しかし、ランプ装置のねじり変形(せん断変形)を受持つ部材はありません。

イクロバスが走行するとタイヤからの車両重量が加振力となります。そのため、ランプ装置自体に自励振動が生じ、ねじりの1次振動が比較的低い周波数になることが予測されます。

正直な話、この時点でランプ装置は構造的に成立していませんでした。ランプ装置のおおよその重量を算定するためのものでした。


4. 製造方法について

この時点で製造を担当していたのは、個人で非鉄金属を中心に製缶加工をしている事業者でした。
溶接作業で使う定盤のサイズはおおよそ1500mm×1500mm四方で、工場内のホイストも0.5tonでした。

製造現場を見て、事業者さんと話をさせてもらった感じでは、小さなユニットを複数製造し、造船所でユニットを組立ながら実装することが確実のように思えました。

そこで企画図では小さなユニットを製造し、造船所で組立てるような構造にしました。
同時に組立作業の要員が確保できないこともわかっていました。
自分も自動車組立ラインの装置を組立て、施工する仕事もしていたので、その経験から製缶加工の事業者と二人で組立てられるものにしました。

この後も、製造と実装で問題が続きます。


5. おわりに
 
最近では、『企画図(提案図)や見積図は無料』をうたい文句にされている事業者もあります。
うまく図面製作費用を製品の販売価格に転嫁しているわけですが、今回のように一個しか製造しない製品は図面作成にかかる費用が全て転嫁されます。そのため極端に製造価格は高くなります。

このような調査も必要なため、見積図についても無償で提供するわけにもいきません。

また『製作費用が高い』ことを理由に、開発依頼や製造コストの見積を依頼を受けることがあります。
しかし、他の事業所に依頼することはゼロからの開発に戻ってしまうため、図面作成費用など新たな出費も加わります、結果として現状よりも支出が発生することもあります。

商品開発についてお困りのことがあれば、お問い合わせフォームからご相談内容をお寄せ下さい。
開発の進め方や費用の抑え方、資金繰りなど些細な事でも相談に応じます。

1-10 of 25